「俺は電気工事士だ、そんな間違いは…」
じーじ、元気出していこうね
じーじは、部屋にいる時はたいてい大音量でテレビをつけている。つけていると表現したのは、テレビはついているものの、たいていは口をあけて寝ているので、テレビを観ているわけではないからである。
じーじは耳が遠いので、信じられないぐらい大きな音に設定している。2階にいても、テレビの内容が聴きとれるほどの大きさなのだ。
ある日、何時間もテレビの音が聞こえない。「も! もしかして……」と不安になりじーじの部屋に様子を見に行くと、電池の残量計(本人は電圧計だと思っている)を片手に部屋の中をうろうろしているではないか。
「どうしたの?」
「ブレーカーが落ちてテレビが映らない」
わが家は、増築の際にじーじがへんてこりんな配線をしたのが原因で、ブレーカーがよく落ちるのだが、この日、ブレーカーは落ちていない。
しかし、じーじの片手には電池の残量計!以前じーじは、ブレーカーが落ちた原因を探るべく、電池の残量計をコンセントに差しまくっていたことがあった。幸いにも感電はしなかったものの、危ない行為には間違いない。
じーじはよくCSやBSのリモコンのボタンを押して「テレビが映らん」と怒る。ある時は、アンテナの端子を違うところに差し替えて、映らなくしてしまったこともあった。しかし、この日は怒っていないし、明らかに落ち込んでいる。リモコンの地デジのボタンを押しても、電池を交換しても映らない。
その間じーじは、「漏電しているのはここか?」などと言いながら、電池の残量計をコンセントに指し込もうとしているではないか。
早くテレビが映ってくれないと、じーじが感電死してしまう!と思いつつよく見たところ、コンセントが抜けているではないか。
「じーじ、コンセント抜いた?」と聞いたところ、「俺は電気工事士だ!そんな間違いを犯すわけはないが……」と、普段なら怒るはずが、落ち込んだまま。
家電製品の修理と日曜大工が得意だったじーじ。以前のじーじなら、テレビの不具合ぐらい簡単に直せたはず……。それで落ち込んでいたんだね。
さあ!大好きなビール飲んで元気出そうね。じーじ。