普段なら怒る認知症父が明らかに落ち込んでいる…驚きの原因

「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

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「俺は電気工事士だ、そんな間違いは…」

じーじ、元気出していこうね

 

じーじは、部屋にいる時はたいてい大音量でテレビをつけている。つけていると表現したのは、テレビはついているものの、たいていは口をあけて寝ているので、テレビを観ているわけではないからである。

 

じーじは耳が遠いので、信じられないぐらい大きな音に設定している。2階にいても、テレビの内容が聴きとれるほどの大きさなのだ。

 

以前のじーじなら、テレビの不具合ぐらい簡単に直せたはず。がっかり、がく~。 写真提供=黒川玲子
以前のじーじなら、テレビの不具合ぐらい簡単に直せたはず。がっかり、がく~。
写真提供=黒川玲子

ある日、何時間もテレビの音が聞こえない。「も! もしかして……」と不安になりじーじの部屋に様子を見に行くと、電池の残量計(本人は電圧計だと思っている)を片手に部屋の中をうろうろしているではないか。

 

「どうしたの?」
「ブレーカーが落ちてテレビが映らない」

 

わが家は、増築の際にじーじがへんてこりんな配線をしたのが原因で、ブレーカーがよく落ちるのだが、この日、ブレーカーは落ちていない。

 

しかし、じーじの片手には電池の残量計!以前じーじは、ブレーカーが落ちた原因を探るべく、電池の残量計をコンセントに差しまくっていたことがあった。幸いにも感電はしなかったものの、危ない行為には間違いない。

 

じーじはよくCSやBSのリモコンのボタンを押して「テレビが映らん」と怒る。ある時は、アンテナの端子を違うところに差し替えて、映らなくしてしまったこともあった。しかし、この日は怒っていないし、明らかに落ち込んでいる。リモコンの地デジのボタンを押しても、電池を交換しても映らない。

 

その間じーじは、「漏電しているのはここか?」などと言いながら、電池の残量計をコンセントに指し込もうとしているではないか。

 

早くテレビが映ってくれないと、じーじが感電死してしまう!と思いつつよく見たところ、コンセントが抜けているではないか。

 

「じーじ、コンセント抜いた?」と聞いたところ、「俺は電気工事士だ!そんな間違いを犯すわけはないが……」と、普段なら怒るはずが、落ち込んだまま。

 

家電製品の修理と日曜大工が得意だったじーじ。以前のじーじなら、テレビの不具合ぐらい簡単に直せたはず……。それで落ち込んでいたんだね。

 

さあ!大好きなビール飲んで元気出そうね。じーじ。

医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。
2015年、株式会社ケー・アール・プランニング設立。編集プロダクションとして介護・福祉を専門とした雑誌の編集を行う傍ら、接遇マナーインストラクターとして、介護付有料老人ホームやデイサービス等で介護の現場に即した研修を行っている。

著者紹介

連載見つめてひらめく介護のかたち「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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