一般に女性の平均寿命は男性より長いもの。それゆえにパートナーに先立たれることは珍しくありません。実際、多くの「夫を亡くした妻」が相続の相談に訪れます。たとえば「相続税対策」や「納税資金対策」。税務署への相続税は「現金一括払い」が原則です。相続税を下げつつ、納税資金を確保するには、どのような選択肢があるのでしょうか。※本連載は、司法書士・行政書士の坂本将来氏、税理士の古谷佑一氏による共著『奥様のための相続のはなし』(日本法令)より一部を抜粋・再編集したものです。

「5年~20年」に分割して納付できる、相続税の延納

相続税を申告期限までに納税できないという場合は、申告期限までに申請して認められることで、「5年~20年」に分割して納付することができます。これを相続税の「延納」といいます。

 

取り急ぎ手元の相続財産の預貯金・現金等で相続税額の一部を納め、残額を延納申請することもできます。延納が認められる主な条件は、次の通りです。

 

●相続税額が10万円超

●金銭一括納付が困難な事由がある

●延納税額および利子税額に相当する担保(不動産等)を提供

 

「手元にある現金を減らしたくないから」といった理由だけでは、延納は認められません。延納は、本来納めるべき相続税に加え利子税がかかります。利率によっては、不動産等を担保に銀行から借りたほうが利率が安い、というケースもあり得ますので、慎重な検討が必要です。

「現金一括払い」も「延納」も困難な場合

金銭一括納付が困難な場合で、かつ、延納による納税も困難な場合は、納税者の申請により、相続した相続財産自体で相続税を納めることができます。これを「物納」といいます。物納が認められる主な条件は、次の通りです。

 

●延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある

●納税が困難な金額内

●申請財産が定められた種類の財産である

 

「現金で払うのがイヤだから、いらない相続財産を相続税の支払いにあてよう」といった理由では、物納は認められません。

 

相続税の物納は、価額が相続税評価額で算定されるため、市場価額よりも相続税評価額が高い場合、売却するよりも有利になり得ます。また、売却が困難な不動産物件を、物納により処分できる場合もあり得ます。

 

ただし、土地を物納する場合、測量と境界確定費用が必要になります。その結果、物納が認められなかった場合も、その費用は返ってはきません。

 

 

坂本 将来

司法書士、行政書士

 

古谷 佑一

税理士

 

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いちばんやさしい 奥様のための相続のはなし

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坂本 将来

古谷 佑一

日本法令

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