一般に女性の平均寿命は男性より長いもの。それゆえにパートナーに先立たれることは珍しくありません。実際、多くの「夫を亡くした妻」が相続の相談に訪れます。たとえば「相続税対策」や「納税資金対策」。税務署への相続税は「現金一括払い」が原則です。相続税を下げつつ、納税資金を確保するには、どのような選択肢があるのでしょうか。※本連載は、司法書士・行政書士の坂本将来氏、税理士の古谷佑一氏による共著『奥様のための相続のはなし』(日本法令)より一部を抜粋・再編集したものです。

「節税策を講じれば安心」は危険な思い込み

奥様「試算してみたら、資産を銀行預金で持っているより、不動産として持っているほうが、相続税が低くなるみたいだから、節税のために不動産を買おうと思うの。これで我が家の相続税対策はバッチリね。」

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

税理士「はたしてそうでしょうか。相続税の節税をしただけでは、必ずしも安心とは限りませんよ。」

 

奥様「どういうこと? 税金が低くなったほうが良いに決まっているじゃない。」

 

税理士「相続税対策を考える際は、相続税の『納税資金対策』も重要です。仮に今、ご主人の相続が発生したとして、試算した相続税額を、現金一括で納税可能ですか? その後の生活費に不安はありませんか?」

 

奥様「たしかに、資産をすべて不動産に変えてしまったら、現金が心許ないわね。私は『配偶者の税額軽減』があるけど、子供たちが心配だわ。」

 

税理士「いくつかの納税資金対策や、物納・延納という方法がありますので、一つずつ検討してみましょう。」

節税重視では「納税資金が足りなくなる」という罠

相続人(奥様や子供など)への遺産分割においては、土地・建物、家財、書画といった換金性の低い財産でも承継されます。しかし、税務署への相続税については、(後述する物納・延納といった例外を除き)「現金一括払い」で支払わなければなりません。

 

相続税対策の結果、相続税をゼロ円もしくは遺産を基礎控除以下にし、申告不要にまでできればその心配は不要ですが、相続税の支払いが必要にもかかわらず、遺産が換金性の低い不動産等がメインというケースでは、納税のための現金を用意しなければなりません。これが「納税資金対策」です。

 

該当するという奥様は、相続税対策と併せて納税資金対策を検討してください。

 

納税資金となる現金を用意する方法としては、たとえば相続した不動産を売却する、相続した不動産を担保に金融機関から借入れを行う、等々が考えられますが、これらはあまり望ましい方法ではありません。

 

その不動産が自宅であれば、相続税支払いのために売ってしまっては住む場所がなくなってしまいますし、不動産の売却には譲渡所得税もかかります。借入れをするにしても、金利の分、金銭的負担が増えます。

 

相続税額を下げる一番の方法は、ご主人(被相続人)の財産価値を減らすことです。たとえば、よくある不動産投資をする節税策をとったとします。現金預金を2億円持っている人が、相続税対策も兼ねて、不動産投資をしました。

 

相続税の計算上、現金預金2億円は2億円の評価ですが、賃貸用建物に投資したところ、約8,000万円まで評価額を圧縮することができました。相続税の課税対象となる財産を1億2,000万円も減らすことができたので、大きな節税になりました。

 

ところが、相続人が1人である場合、相続税額は680万円です。預金2億円をすべて不動産に変えてしまっては、相続税を納めることができません。

 

一方、とくに相続税対策をせず、2億円を現金預金で持っていた場合、相続税額は4,860万円になりますが、手元の現金から納めることができ、納税後も1億5,000万円もの現金預金が手元に残ります。

 

相続税を下げることばかりを優先した結果、納税資金に困ることのないよう、相続税対策と納税資金対策のバランスをとることが大切です。

 

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