「やっとローンを完済できた」次なる連絡が来て…
■今度は金融機関から変更登記の提案が
やがてDさんが亡くなり、Dさんの配偶者である奥様が宅地のすべてと二世帯住宅の1階部分を相続されました。
その後、息子さんも無事、改築費のローンを完済。ところが、今度は金融機関から「二次相続のことを考えて、二世帯住宅をお母様との共有登記に変更されてはどうか」とアドバイスされます。
戸惑った息子さんは当税理士事務所へ足を運びました。
「母から自分への二次相続を考えると、なぜ、共有登記に変更が必要なのか?」と、息子さんは疑問を抱いていました。
現在、建物の1階をDさんの奥様(息子さんから見てお母様)、2階を息子さんが「区分所有」されています。宅地はすべて奥様所有ですので、奥様から息子さんへの相続が発生した際、かなりの相続税が課せられてしまう可能性があります。
Dさん宅は1階と2階が完全分離されているため、現在のままでは「小規模宅地等の特例」が適用できません。というのも、「小規模宅地等の特例」は、区分登記されていない非分離型の二世帯住宅でないと適用できないのです。
「小規模宅地等の特例」が適用できれば、330平方メートルまでの宅地なら相続税評価額の80%が減額でき、相続税の節税対策に有効です。Dさん宅にこの特例を適用するには、以下の手順を踏めば可能となります。
(1)まず、建物1階の奥様の持ち分半分、2階の息子さんの持ち分半分を交換します。これにより、1階も、2階も、奥様と息子さんが1/2ずつ所有する状態となります。
(2)固定資産の区分内で同じ種類の土地と土地、建物と建物を交換した場合、「固定資産の交換の特例」により譲渡はなかったものとされ、譲渡所得税は課されません。ただし、交換する固定資産には条件があり、どちらも1年以上の所有であること、交換する資産双方の差額が高いほうの時価の20%以内であること、交換直前と同じ用途に供することなどが定められています。
(3)登記上の交換は司法書士に依頼し、相互に変更登記を行います。しかし、これで終わりではありません。このままでは、まだ登記上は1階にも2階にも親子共有の家が2軒ある状態となってしまいます。