「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父「大切な書類を整理した」でなくなったもの

年金通知は残った

 

ある日、テレビのニュースで「年金の話題」を見ていたじーじが、「れーこの時代は、俺たちみたいに年金がいっぱいもらえないから大変だなあ」と言った。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

「そうだよ、この間、老齢年金の見込み額を見てびっくりしたよ。一生元気で働かないと、生きていけないよ……」と、答えたところで、じーじが「ロダンの考える人」のポーズをとった。

 

ま、まずい!

 

このポーズは、認知星人に変身する前のルーティン。認知星と交信しているのだ。そして認知星人に変身したじーじは、「おい、玄関の前の道路を売るから〇建設にいくぞ」。

 

出たー! 以前、わが家の固定資産税が3千万円だとか、家が乗っ取られるとかさんざん騒いだ事件再発の予感。

 

「家の前の道路を売るの?」
「そうだ、大通りまでで千坪はある」

 

いやいや、家の前の道路は近隣の4軒で購入している私道だし、もちろん千坪なんてあるわけもない。しかし、じーじは、デイサービスに持って行くカバンになぜか、リハパン(パンツタイプの紙おむつ)を入れながら「おい! 早く支度しろ、登記簿謄本も用意しろ」と、〇建設に行く気満々。

 

「じゃあ、登記簿謄本探すから、ビール飲んで待っていて」と言って、ビールを献上。もちろん私は〇×建設に行く気などみじんもないが、登記簿謄本を探してみることに。

 

几帳面な母は、大切なものは必ずお菓子の箱にインデックスを貼って保管していた。だからすぐ見つかると思っていたが、あったはずの場所に登記簿謄本の箱がない! あちこち探してみたところ、やっと発見した!

 

ところが! インデックスにはじーじの字で「家屋登記謄本」と書き換えられているではないか! 嫌な予感がしてあわてて箱を開けてみると、数十年前のじーじとばーばの年金通知がどっさり出てきた。

 

そういえば最近、「大切な書類を整理した」と言っていたのを思いだした。焦る私を横目に、じーじはカバンをしょったまま、美味しそうにビールを飲んでいる。〇建設に行くと言ったことは忘れてしまったようだが、わが家の登記簿謄本は行方不明のままである。

 

その後、登記簿謄本はなくても家を売買できることを知ったので、登記簿謄本を探すことをやめた。あとは、じーじが急に思い立って登記簿謄本を探そうとしないことを祈るばかりだ。

 

似たようなことはほかにもあり、先日私の子供のころの写真が必要になり、母が収納してくれていた押し入れを見ると、なんと、生まれた時から中学校までのアルバムが一切合切消えていた。私のアルバムがあったはずの棚には、なぜか若かりし頃のじーじが満載のアルバムが鎮座している。

 

犯人はじーじに違いないが、「私のアルバム知ってる?」なんて聞いたら大事件に発展してしまいそうなので、聞かないことにした。

 

Come back My Album !

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録