認知症父「大切な書類を整理した」でなくなったもの
年金通知は残った
ある日、テレビのニュースで「年金の話題」を見ていたじーじが、「れーこの時代は、俺たちみたいに年金がいっぱいもらえないから大変だなあ」と言った。
「そうだよ、この間、老齢年金の見込み額を見てびっくりしたよ。一生元気で働かないと、生きていけないよ……」と、答えたところで、じーじが「ロダンの考える人」のポーズをとった。
ま、まずい!
このポーズは、認知星人に変身する前のルーティン。認知星と交信しているのだ。そして認知星人に変身したじーじは、「おい、玄関の前の道路を売るから〇建設にいくぞ」。
出たー! 以前、わが家の固定資産税が3千万円だとか、家が乗っ取られるとかさんざん騒いだ事件再発の予感。
「家の前の道路を売るの?」
「そうだ、大通りまでで千坪はある」
いやいや、家の前の道路は近隣の4軒で購入している私道だし、もちろん千坪なんてあるわけもない。しかし、じーじは、デイサービスに持って行くカバンになぜか、リハパン(パンツタイプの紙おむつ)を入れながら「おい! 早く支度しろ、登記簿謄本も用意しろ」と、〇建設に行く気満々。
「じゃあ、登記簿謄本探すから、ビール飲んで待っていて」と言って、ビールを献上。もちろん私は〇×建設に行く気などみじんもないが、登記簿謄本を探してみることに。
几帳面な母は、大切なものは必ずお菓子の箱にインデックスを貼って保管していた。だからすぐ見つかると思っていたが、あったはずの場所に登記簿謄本の箱がない! あちこち探してみたところ、やっと発見した!
ところが! インデックスにはじーじの字で「家屋登記謄本」と書き換えられているではないか! 嫌な予感がしてあわてて箱を開けてみると、数十年前のじーじとばーばの年金通知がどっさり出てきた。
そういえば最近、「大切な書類を整理した」と言っていたのを思いだした。焦る私を横目に、じーじはカバンをしょったまま、美味しそうにビールを飲んでいる。〇建設に行くと言ったことは忘れてしまったようだが、わが家の登記簿謄本は行方不明のままである。
その後、登記簿謄本はなくても家を売買できることを知ったので、登記簿謄本を探すことをやめた。あとは、じーじが急に思い立って登記簿謄本を探そうとしないことを祈るばかりだ。
似たようなことはほかにもあり、先日私の子供のころの写真が必要になり、母が収納してくれていた押し入れを見ると、なんと、生まれた時から中学校までのアルバムが一切合切消えていた。私のアルバムがあったはずの棚には、なぜか若かりし頃のじーじが満載のアルバムが鎮座している。
犯人はじーじに違いないが、「私のアルバム知ってる?」なんて聞いたら大事件に発展してしまいそうなので、聞かないことにした。
Come back My Album !
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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