Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。本連載は秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

すでにアートが社会問題の解決に寄与し始めている

メルセデス・ベンツ「F015」

 

では、アートによって提示される「問い」は、産業界においてどのような経済的影響を与えるのでしょうか? その答えを、オーストリアのリンツで毎年9月に開催されている、芸術・先端技術・文化の祭典、メディアアートの世界的なイベントとして知られる「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」で見ることができます。

 

2018年、同フェスティバルに54カ国から1300人を超えるアーティストが集結、12の会場で作品を出展して、過去最大となる10万5000人が訪れました。メイン会場として利用されるアルスエレクトロニカ・センターには、研究開発機関と美術館の2つの側面があります。様々な専門性を持つ人々が、フューチャーラボと呼ばれる研究開発機関で研究をしたり、個別のテーマを持ったオープンラボと呼ばれる参加型の施設で展示を行いました。

 

アルスエレクトロニカの研究機関であるフューチャーラボでは、1年を通じてメディアアーティストたちが提起した問題の解決に取り組む様子が見られました。特筆すべきは、ダイムラーとの共同研究が行われ、人と自動運転車とのコミュニケーションのあり方を模索するものでした。

 

その結果、メルセデス・ベンツの自動運転のコンセプトカー「F015」が完成したのです。「F015」には、自動運転車が人の存在に気づくとレーザーライトで路面に横断歩道をつくる機能が搭載されています。市街地などで道路を渡ろうとする人を検知すると、停車してレーザー光線で前方に横断歩道を描き出し、さらに後方の車に赤い「STOP」の文字を表示して注意を喚起する機能です。そこで歩行者が「お先にどうぞ」というジェスチャーをすると、「F015」は「ありがとう」と反応して再発進するのです。

 

このように、これまでウィンドウ越しにドライバーが行っていた「お先にどうぞ」のコミュニケーションを、クルマが代わりに行うのです。自動運転が当たり前になるような社会に求められるコミュニケーションとは何か、そんな問いへの答えがこの機能ということです。

 

NTTも自社が持つ人工知能やメディア処理技術等の最先端テクノロジーと、フューチャーラボのスキルを融合させた、新しいコンセプトの創出や研究の推進を進めていて、2020年の課題として掲げている「深い感動、新しい体験、おもてなしの提供」を実現することを目指しています。

 

これはディスプレイを搭載し地上を走るロボット(グラウンドボット)や数千機のドローンによるSwarm(群れ)を使った、公共空間でのナビゲーションや新しいスポーツ観戦を提供するプロジェクトで、2020年に開催の東京オリンピックで披露される予定です。

 

アートが社会問題を明確にして、新たな問いを生み出し、その上でテクノロジーが問題を解決する。これらの活動が、すでにアルスエレクトロニカ・センターでは行われていました。

 

このようにアートが社会問題の解決に寄与し始めているのです。これは言語だけでは説明しきれなくなった現象が急増し、課題が山積する現代社会において、アートの役割が浮き彫りになる出来事です。

 

秋元 雄史
東京藝術大学大学美術館長・教授

 

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