「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

糸結びができないと命を取られるかもしれない

しかも、1つ上の研修医の先輩が外科のローテーションでかなり厳しく指導されている姿を目の当たりにし、僕の中では石山病院の外科研修は辛いというイメージが定着していた。だから僕は戦々恐々としていた。

 

外科研修が始まる1週間前、長谷川先生は大量の手術用の糸を僕に渡しながら言った。

 

「山川くん、手術にも興味があるんだよね。よろしくね」

「よろしくお願いします」

「とりあえず、これで糸結びの練習をしてきて」

 

僕は糸結びができないと命を取られるかもしれないという恐怖心から、必死に糸を消費していった。

 

「渡した糸、全部使い切ったの? さすがは外科志望」

 

外科研修が始まる前日、必死に糸結びの練習をする僕と、机の上に広がっている結ばれた大量の糸を見て、長谷川先生は僕に声をかけてくれた。どうやら研修が始まってからの練習分もくれていたらしい。

 

何か勘違いされているようだったが、そう言われて悪い気はしなかった。そして、外科研修の初日がやってきた。

 

「研修医の山川です。今日から3ヶ月間よろしくお願いします」

次ページ同僚への劣等感が拭えない僕…外科医の先輩を前にして
孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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