「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

執筆依頼は「マッカーサーと帝国ホテルでのこと」

じーじ、締め切りに追われる

 

ある日曜日、お昼寝から起きてきたじーじが、突然びっくりするようなひと言を発した。

 

「おい、原稿用紙を買ってきてくれ」
「いいよ、でも何に使うの?」
「GHQのことと、マッカーサーと帝国ホテルでご飯を一緒に食べたことを執筆してくれと頼まれたからだ!」

 

へ! 執筆? マッカーサーと帝国ホテルでご飯を食べただとぉ?

 

じーじ、原稿用紙に向かう。写真提供=黒川玲子
じーじ、原稿用紙に向かう。写真提供=黒川玲子

 

「本当に?」などと聞いてみたらすぐに、怒りん坊星人に変身するだろうから、ここはひとまず、原稿用紙を買いに行くことに。

 

原稿用紙を買ってきてあげたら、即! 執筆を開始。誰に頼まれたの? と聞いたところ

 

「NHKだ! 締切は〇月×日だからな。急がなくては」

 

だそうだ……すっげ~。締切日まで決まってる。

 

しかし、NHKとはこりゃすごい。どこからNHKが出てきたのかと思ったら、数年前にじーじが取り寄せた、NHKの通信講座の自分史の案内DMがじーじの机に置いてあった。

 

どうやらNHKの通信講座→NHKから執筆を依頼された。ということになったらしい。

 

そこから数日、ご飯を食べている時以外は、執筆活動に専念。夜な夜なカリカリカリカリ鉛筆を走らせるじーじ。夜遅くまで執筆活動をしているものだから、デイサービスでは、ほぼ、居眠りの毎日らしく、スタッフさんが「最近昼夜逆転されているようですが」と心配してくださるほど。

 

「あんまり根を詰めると、疲れるよ」と優しい言葉をかけると「〇月×日の締切に間に合わないから」と聞く耳を持たないので、放置することに。

 

数週間後、やっと書きあがった原稿を準夜勤ちゃん(私の娘)に渡し「ワープロ(パソコンのこと)で清書してくれ」とじーじ。

 

今まで私にも読ませてくれなかったので、どんな内容か楽しみにしていたところ、清書した原稿を受け取ったじーじは「だめだ、これでは検閲に引っかかって墨で黒く塗りつぶされる箇所が多すぎる……」と一言。

 

また、その日から執筆活動を始めるのであった。どうやら、じーじ曰く、執筆した原稿は本になり、出版した暁には、NHKへのテレビ出演も決まっているらしい。今晩も、カリカリカリカリ、じーじの鉛筆の音が響くわが家なのである。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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