主に女性が遭遇しやすいトラブルの一つ、「痴漢」。そのほとんどは満員電車で行われており、電車通勤をする人々にとってはいつ遭遇してもおかしくない犯罪です。痴漢被害に遭ったときどうすればよいのでしょうか? 現場での行動から示談などの解決まで、有効な対処法を解説。※本連載は、上谷さくら弁護士の著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。本連載に掲載する民法は2020年4月施行の改正民法の内容、そのほかの法令は2020年3月時点の内容に基づきます。

「痴漢」はどの都道府県の条例でも禁止行為

<あなたを守る法律>

【刑法】第176条 強制わいせつ

 

13歳以上の者に対し、暴行、または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6ヵ月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 

「痴漢罪」という犯罪はありません。しかし各都道府県の条例で、禁止行為として定められています。たとえば東京都の条例の場合、「公共の場所、または公共の乗り物において、衣服そのほかの身に着ける物の上から、または直接に人の身体に触れること」と規定されています。

 

罰則内容も各都道府県で異なりますが、たとえば東京都の場合、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

 

痴漢がエスカレートして、「下着の中に手を入れて女性器をさわる」などの場合は、刑法の強制わいせつ罪となります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

痴漢被害で泣き寝入りしないために…パターン別の対処

●満員電車の場合

満員電車では、誰がさわっているのかわかりにくいこともあります。また「この人痴漢です」と言っても、「違う」と言われた場合、目撃者もいなければ結局逃げられてしまいます。

 

できればさわってくる手を引っかくなどして、犯人の手に証拠を残すようにしましょう。被害者の爪に加害者の皮膚片があれば、DNA鑑定ができる可能性があります。自分のかゆい部分をかいても、爪の間に皮膚片は入るので、強くひっかく必要はありません。なお、安全ピンで刺すなどは、凶器とも考えられ、過剰防衛となる可能性があるためおすすめできません。

 

また衣服には犯人のDNAが残存している可能性があります。犯人がさわった部位をさわらないことが重要です。ただし、満員電車の痴漢では、いつどのようにDNAがついたのか判然としないので、証拠の価値は必ずしも高くありません。

 

●携帯電話を操作していた場合

できれば加害者の顔や手を撮影しましょう。逃げられても、顔が残っていれば後から捜査が可能になります。また、撮影すれば、発生場所や日時の特定に役立ちます。

 

●深夜の帰宅途中などの場合

すぐに110番をしましょう。コンビニなどに入り、お店の人に110番を頼んでもかまいません。犯人を捕まえられた場合、被害者は、警察から被害状況の事情聴取を受け、供述調書を作成します。また、「どのように被害にあったか」という再現を、被害者に見立てた人形を使って行います。ただし、加害者が逮捕されるかどうかは場合によります。示談が成立して不起訴になる場合もあれば、略式起訴で罰金、正式裁判になる場合もあります。

 

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おとめ六法

おとめ六法

著者:上谷 さくら

著者:岸本 学

イラスト:Caho

KADOKAWA

『わたしが悪いから、こうなっちゃったの?  警察に行ったらつかまえてくれるの?  相談したら、逆に不利にならないの?』 万が一のそのときというのは、なにをどうすればいいかわからないもの。 本書は女性の一生に…

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