最近登場した衝撃的なワード、「コロナ離婚」。しかし近年の離婚件数は減少傾向にあり、2020年の件数も前年以下。このことからコロナ離婚という言葉に懐疑的な人も少なくないでしょう。しかし離婚カウンセリングの現場からは、女性からの相談が急増したという証言があります。もし裁判所の調停を受けることになった場合、離婚の成立にはどのような条件が求められるのでしょうか? ※本連載は、上谷さくら弁護士の著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

別居同然の状態です。離婚は認められますか?

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<あなたを守る法律>

【民法】第770条 裁判上の離婚

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 

①配偶者に不貞な行為があったとき。

②配偶者から悪意で遺棄されたとき。

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

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別居は、夫婦が別々に住んでいることを指します。離婚で争いになる場合、裁判所が離婚を認める基準の一つに「別居期間の長さ」がありますが、家庭内別居では別々に住んでいないので、別居とみなされないのが原則です。

 

そのため、「長年、家庭内別居の状態」といくら主張しても、それだけで「夫婦関係が破綻している」という判断はされません。「まったく会話がない」「お互い顔を合わせないように、生活の時間帯をズラしている」などの事情があれば、夫婦関係が悪化していたこと自体は認定される可能性があります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

Q1.「家庭内別居中に相手が不倫をした。慰謝料請求は行いたい。」

 

⇒家庭内別居は、「夫婦関係の破綻」とみなされない可能性が高いため、慰謝料請求が可能です。

 

Q2.「単身赴任は別居扱いになる?」

 

⇒単身赴任は基本的に別居ではありません。状況によっては頻繁に自宅に帰るのが難しいこともあるからです。別居と認定することは困難な場合がほとんどだと考えられます。

三行半を突き付ける前にやる「離婚後の生活」準備

Q3.「配偶者の不倫。関係を見直すために別居することに。離婚も見据えて準備しておくべきことは?」

 

⇒夫婦の共有財産の確認をすることが大事です。名義にかかわらず、預貯金の口座を把握する、生命保険の有無、生命保険のタイプ(学資保険は忘れがちなので注意!)、会社で財形貯蓄がないか、有価証券の有無、車両の有無、などを確認しましょう。

 

子どもがいる場合は、転校するのか、生活費はどうするのか、働いている間に預ける場所はあるかどうかを確認します。別居した親と子どもの関わり方についても、約束事を決めておきましょう。

 

浮気が原因で別居する場合は、浮気の証拠も確保しておきましょう。浮気について相手が認めてそれで別居する、ということがわかる証拠(会話の録音、録画など)を作っておくのがよいでしょう。

 

Q4.「専業主婦だった自分にはすぐ十分な収入が見込めない。別居中は夫に生活費を頼める?」

 

⇒「婚姻費用」(※編集部注:居住費や生活費、学費など)を支払うべき法律上の義務があります。任意で渡してくれないようであれば、家裁に調停を申し立てるべきです。支払義務者が拒否しても、裁判所が「いくら払うように」と決めてくれます。支払われない場合、給与の差し押さえができます。

 

※本連載に掲載する民法は2020年4月施行の改正民法の内容、そのほかの法令は2020年3月時点の内容に基づきます。

 

 

上谷 さくら

弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長

 

 

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おとめ六法

おとめ六法

著者:上谷 さくら

著者:岸本 学

イラスト:Caho

KADOKAWA

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