「隠し撮り」や「のぞき見」…これらそのものを取り締まる法律はなく、規制や罰則の内容は各都道府県ごとに異なるというのが現状です。しかし盗撮機器は日に日に進化しており、いまや一目では見分けがつかないものがほとんどです。手口の巧妙化に伴い、会社や学校などあらゆる場面で被害が続出しています。法律や規制内容の現状を押さえておきましょう。※本連載は、上谷さくら弁護士の著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。本連載に掲載する民法は2020年4月施行の改正民法の内容、そのほかの法令は2020年3月時点の内容に基づきます。

「公共の場での盗撮」はどの県でも処罰の対象だが…

<あなたを守る法律>

【東京都迷惑防止条例】第5条 粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止

 

1 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。

 

②次のいずれかに掲げる場所、または乗り物における人の通常衣服で隠されている下着または身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。

 

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部、または一部を着けない状態でいるような場所

 

ロ 公共の場所、公共の乗り物、学校、事務所、タクシーその他不特定、または多数の者が利用し、または出入りする場所、または乗り物

私的スペースでの盗撮は「各都道府県の規制」次第

盗撮そのものを取り締まる法律はありません。ただし、各都道府県の条例によって規制されています。そのため、規制される内容は都道府県ごとに異なります。

 

たとえば、会社の事務室で、社長が女性社員のスカートの中を盗撮した場合、東京や愛知では処罰されますが、ある県では罪に問えません。「誰かの家」などの私的スペースでの盗撮は、条例によって規制されていないことがあるからです。「公共の場」であれば、どこの条例でも罪に問えるでしょう。

 

処罰も、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都、愛知県など)」や、「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金(鹿児島県、秋田県など)」など、都道府県によって罪の重さが違います。

 

条例で規制の対象になっていない場合でも、軽犯罪法を適用できる可能性があります。ただし軽犯罪法は、場所が風呂場など「通常衣服をつけないでいるような場所」に限定されているうえ、罰則が「拘留・科料」しかありません。条例に比べてかなり軽いといえます。

 

状況によっては刑法の「建造物侵入罪」にあてはまる場合もあります。たとえば、男性が会社内の女性トイレで盗撮した場合、正当な理由がないのに女性トイレに入ったことを罪に問うものです。

 

ただし、この場合の被害者は、建物の管理者です。盗撮された女性は刑事事件の被害者とはなりません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

<罰金と科料の違い>

 

罰金も科料も、お金を支払わせる刑事罰です。罰金と科料の違いは、金額の大きさです。罰金は1万円以上(刑法第15条)、科料は1000円以上1万円未満です(刑法第17条)。科料は、比較的軽い罪の罰則ということになります。

 

ただ、たとえ1万円未満でも、納付しなければ、罰金と同じペナルティが科されます。財産を差し押さえられたり、刑務所に入って一定の作業をしたりしなければなりません。

次ページ増加する「隠し撮り」「のぞき見」…被害事例のQ&A
おとめ六法

おとめ六法

著者:上谷 さくら

著者:岸本 学

イラスト:Caho

KADOKAWA

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