離婚する場合、夫婦にはそれぞれ「婚姻期間中に協力して築いた財産(共有財産)」の半分を請求する権利があります。この共有財産にはどのようなものが含まれるのでしょうか? ※本連載は、上谷さくら弁護士の著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。本連載に掲載する民法は2020年4月施行の改正民法の内容、そのほかの法令は2020年3月時点の内容に基づきます。

夫婦で築いた財産は「5:5」で分け合うのが基本

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<あなたを守る法律>

【民法】第768条 財産分与

1 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

 

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。

 

3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額および方法を定める。

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(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

婚姻期間中に、夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を分けることを、「財産分与」といいます。分与の割合は、5対5で均等に分けるのが原則です。妻が専業主婦だとしても、夫と同等の権利を主張できます。妻が家事に専念することで夫は仕事に集中でき、その結果収入が得られると考えられるからです。

 

現金や預貯金のほかに、不動産や車、積立型の生命保険の解約返戻金なども対象になります。結婚前に持っていた財産は、「夫婦で協力して築いた財産」ではないので、その人の「特有財産」となり、分与の対象にはなりません。また、相続財産も夫婦で協力して築いた財産ではないので、財産分与の対象にはなりません。婚姻期間中に受けたものであってもです。

 

双方が納得するのであれば、どのように財産を分けてもかまいません。また、双方が合意できれば、口頭だけの合意でかまいません。心配な場合は、後日もめないように、公正証書などにしておくのがいいでしょう。

上限額500万円だが…離婚報道「慰謝料1憶円」の真相

Q.「共働きの夫婦。2人とも毎月10万円ずつ家計に拠出し、残りはそれぞれ自分のお小遣いにしようと取り決めてやってきた。わたしはその小遣いを貯金しており、個人の口座に1000万ある。これは分けなくていいお金?」

 

⇒これも原則「共有財産」に含まれますので、夫婦で分けます。「共有財産」は名義に関係なく、共同で築いたものとされます。誰の名義の口座か、不動産が誰の名義かに関係なく、半分ずつで分けます。

 

慰謝料は、不貞行為やDVなどの不法行為があった場合に発生するものですので、財産分与とは別です。芸能人の離婚などで、「慰謝料1憶円」などと報道されることがありますが、裁判の場合、慰謝料は500万円が限度です。報道されている「慰謝料」は、財産分与も含まれていると思われます。

 

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【民法】第762条 夫婦間における財産の帰属

1 夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。

2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

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上谷 さくら

弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長

 

 

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おとめ六法

おとめ六法

著者:上谷 さくら

著者:岸本 学

イラスト:Caho

KADOKAWA

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