少子高齢化により労働力不足が深刻化の一途を辿る今、「シニア活用」こそが人材不足を解消する最後の砦です。とはいえ、多くの企業が取り組む「定年退職年齢の見直し」や「定年退職後の再雇用」といった小手先ばかりの「定年延長」では、かえって企業経営に重大な影響をおよぼしかねません。安易な「定年延長」がどのような状況を生み出すのか、日本全国で大量発生している「残念なシニア」に焦点を当てて解説。※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

いるいる…他人の仕事を増やす「迷惑系」シニア

<A. 迷惑系の残念なシニア>

 

「迷惑系」の特徴は、そのシニアが動けば動くほど周囲の同僚にとって余計な仕事が増えてしまう点にあります。

 

その1つ目、A-1の「時間泥棒シニア」は、細かな実務を独力で担うことができないシニアを指します。特にPCやICT機器の操作を苦手とする場合が多く、操作方法を何度教えても同僚に助けを求め、周囲の時間を奪います。また、話が長いことも多く、しかも同じ話を何度もするため、職場の同僚はうんざりしている傾向にあります。

 

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くの企業でテレワークが導入されましたが、時間泥棒シニアはテレワーク環境下において満足に仕事をすることすらままなりません。

 

2つ目のA-2「騒音シニア」は、シンプルに声の音量が非常に大きいシニアを意味します。加齢に伴って耳が遠くなってきた方にありがちですが、声の大きさが周囲にとって煩わしく、同僚の集中力を削いでしまいます。また、シニアはEメールやビジネスチャットツールなどでのやり取りよりも電話による会話を好む傾向にあります。相手や周囲の都合を考えず、ところかまわず電話をし、しかも大きな声で話すため、職場で騒音をまき散らす結果につながります。

 

迷惑系の最後、A-3は「暴走シニア」です。会社で失うものが何もなく、怖いものなしの状態をいいことに、やりたい放題するシニアを指します。このタイプに責任感の欠如が加わってしまうと、その尻拭いをしなければならない周囲の関係者はたまったものではありません。

 

以上が迷惑系の残念なシニアでした。皆さんの会社にも当てはまる人がいたのではないでしょうか。特にA-1の時間泥棒シニアはかなりの確率で存在していると想定されます。しかも本人には悪気がなかったりする(むしろPCやICT機器を操作できないことを誇りとしている)分、余計にやっかいです。

口出しはするが手出しはせぬ…「勘違い系」シニア

<B. 勘違い系の残念なシニア>

 

「勘違い系」の残念なシニアの特徴は、会社・組織・同僚などからの期待を都合よく自分勝手に解釈し、結果として期待に沿わない働きぶりを示すことにあります。

 

B-1の「武勇伝シニア」は、自らの昔の経験を美化し、あたかも武勇伝のように誇らしげに語り、過去の成功体験に固執するシニアです。もちろん、今でも通用する成功体験を適切な形で共有してもらえるのであれば、後進にとっても参考になります。しかし、事業を取り巻く環境が大きく変わり、昔のやり方が陳腐化しているにもかかわらず、「私が若かった頃は…」「今の若い人たちは…」と語ってしまうのが、残念な武勇伝シニアの残念たるゆえんです。

 

勘違い系の2つ目、B-2の「先輩面シニア」は、自分の上司が元部下や後輩であることをいいことに、偉ぶった態度を取るシニアです。自分より年齢が若い上司を遠くから「おーい、A君」と呼びつけるのは序の口で、「私が部長だったら、こんなことはしない」など、現職の管理職を上から目線で批判する傾向にあります。

 

この先輩面シニアの存在について、「今の時代、若い上司が年上の部下を管理するのは当たり前」といった話を、現場のことが分かっていない人事部員から聞くことがあります。確かに、職場の上司と部下の年齢が逆転することが珍しい事象ではなくなった日本企業も多いことでしょう。しかし、シニア雇用における年下上司・年上部下の関係は生易しいものではありません。なぜならば、単に部下が年上というだけでなく、自分の元上司が部下になってしまうことが多いからです。

 

極端に言えば、昨日まで自分に指示を出していた部長が、今日から実務を担うプレーヤーとして自分の部下になり、自分が元上司に指示を出さないといけない、そんな厄介な状況が現実のものとなります。そういった現場の生々しい実情を正しく認識しておかないと、定年延長の検討はうまくいきません。

 

B-3の「毒吐きシニア」は、60歳前に比べて給与が下がったことに文句を言い、仕事の手を抜き、それを悪いこととも思わずに開き直るシニアです。「給与が下がったのだから、給与分の仕事しかしない」という主張をしながら、実際には給与分の仕事すらできていないことがほとんどです。そのうえ、この毒吐きシニアは数も多いのです。彼らよりも給与水準の低い若手同僚にとっては、その存在自体がやる気を失わせる要因になってしまいます。

 

こういった勘違い系の残念なシニアに共通して言えるのは、口は出すが手は出さないという点です。プロジェクト会議などで、懸念・留意事項や取り組まなければならないこと、念のための確認項目を口頭で並べ立て、並べ立てるだけで自分は行動しないという傾向にあります。総じて、勘違い系の残念なシニアのスタンスは批評家的なため、職場の同僚にとって、一緒に働いていて気持ちの良い存在ではありません。

お仕事は、定時まで時間を潰すこと…「無力系」シニア

<C. 無力系の残念なシニア>

 

残念なシニアの3つ目の系統である「無力系」には、そもそも職務遂行に必要な知識や能力が足りない、または知識や能力があっても引き出せないという特徴があります。

 

まず、C-1の「ルーティンシニア」は、就労年数は長いものの、誰でも担える簡単な業務しか経験しておらず、キャリアの核となるような職業的専門性を有していないタイプです。サポート的な事務職の社員コースを歩んできた人だけでなく、総合職であってもこれに当てはまる人材が日本企業では多々見受けられます。

 

C-2の「暗黙知シニア」は、本人に熟達した知識や能力があったとしても、それを言葉で表現できない、または表現しようとしないシニアです。本来、シニアには高度な技術・技能の次世代への伝承が期待されるのですが、暗黙知シニアの存在によって、その断絶が生じてしまう可能性があります。それどころか、言葉で表さないことを誇りにし、「背中を見て学べ」と若手に言い放つことすらある始末です。

 

最後はC-3の「抜け殻シニア」です。年齢を理由にチャレンジすることから逃げ、覇気がなく、与えられた職務だけをこなそうとします。A-1からC-2までのシニアは、うまく付き合うことでやる気や能力を引き出すことも可能ですが、C-3の抜け殻シニアはそれすら難しい状態になってしまっています。自分が担うべき職務の幅をなるべく狭くしようとするので、周囲の同僚がその矮小化分をカバーしなければなりません。

 

無力系の残念なシニアがいる職場においては、周囲がその存在を必要悪として受け入れてしまい、シニアが十分な役割を担っていないことに職場全体が見て見ぬふりをしてしまいがちです。そのため、このタイプのシニアは就業時間を目立たぬご隠居のように悠々自適に過ごし、時間を潰すためにネットサーフィンにいそしんだり、社内のあちこちを散歩して回ったりしています。

 

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失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

石黒 太郎

光文社

シニア活用こそが、人材不足解消の最後の砦。 「定年延長」に失敗すれば、日本経済は必ず崩壊する…。 少子化の進展により、日本の生産年齢人口は急激に減少中。さらに、バブル期入社組の大量定年退職が秒読みに入ったこ…

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