先祖代々の農業を継ぐつもりの長男が事故に遭い、働けなくなりました。父が亡くなったあと、不動産をすべて相続するつもりでしたが、遺産分割協議の席での発言がほかの相続人を激怒させ、その後の話し合いが進みません。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

妹たちは、遺産の取り分が不服なのではなく…

筆者は市川さんの依頼を受け、まずは2人の妹に連絡しました。そして、遺産分割が決まらないままだと、困るのは相続人全員だということを説明しました。幸い、2人は第三者の立場である筆者の言葉に耳を傾けてくれ、ようやく遺産分割協議に向けて一歩前進することになりました。


次のステップとして、2人がどれくらいの財産を分けてもらいたいと思っているか、考えを遠慮なく話してもらいました。

 

その話し合いでわかったのは、市川さんの2人の妹は、事故で体を悪くした兄へ父親の遺産のほとんどを渡すことに異論はないものの、市川さんの言葉にとても傷つき、立腹しているということ、そして、市川さんが提案した金額より、少しばかり多く受け取りたいという希望を持っているということでした。このような、些細の言葉の使い方で関係がこじれ、意思疎通ができなくなるケースは珍しくないのです。

 

市川さんが暮らしている地域では、子どもたちはそれぞれ親の土地に家を建ててもらうことが多いのですが、市川さんの一族はそのケースと異なるため、妹2人には、当初の提示額より少し多く現金を相続してもらうことになりました。

 

そこで問題になってくるのが、行方不明の次男のことです。次男は30年近く前に失踪し、連絡が取れないため、市川さんは不安を抱えていました。本人を探すことが困難だと判断した市川さんは、財産管理人の手続きをすることにしました。

 

しかし、手続きを進めるうち、次男は結婚していて娘が1人いることが判明。そして話し合いを経て、弟の娘に財産管理人になってもらうことができました。

 

家庭裁判所の審判も下り、ほかの相続人と同様に現金を分ることができ、相続人全員の財産分与が無事に終了しました。

 

実際の遺産の分割方法ですが、まずは不動産をすべて市川さんが相続し、その後、市川さんからほかの相続人たちに代償金として現金を分けました。そのため、遺産分割協議書には「長男が代償債務を負い、妹弟は代償債権を得る」と記載しています。売却後は、各自の希望どおりの額を分けることでほかの相続人も納得し、遺産分割協議書は完成しました。

 

いったん母親が不動産を相続する方法もありましたが、二次相続の際の手間を減らすため、母親の相続割合を減らしたのです。すべての不動産を長男が相続し、納税資金のための土地売却などの手続きも長男だけで行ったほうが、実務上やりやすい等、総合的に判断した結果の判断でした。

 

今回は、感情的になりがちだった当事者間の話し合いに、第三者が調整役として入ったことで話し合いがまとまった好例でした。また、遺産分割では、二次相続がスムーズになるよう母親の相続する割合を減らすとともに、代償債務・代償債権を使うことで、煩瑣な手続きとならないようにしています。

 

また相続発生に当たり、相続人に所在が不明の方が含まれるケースもありますが、その場合は家庭裁判所に財産管理人選定の審判を申し立て、手続きを進行させるのが一般的です。

 

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曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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