先祖代々の農業を継ぐつもりの長男が事故に遭い、働けなくなりました。父が亡くなったあと、不動産をすべて相続するつもりでしたが、遺産分割協議の席での発言がほかの相続人を激怒させ、その後の話し合いが進みません。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
農家を継ぐはずだった長男が事故に遭い…
今回の相談者は、50代無職の市川さんです。遺産分割協議で揉めているため、相続人間を調整してもらえる相談先を探しているとのことで、筆者の事務所を訪れました。
市川さんの家系は代々の農家で、広い土地を所有していますが、その多くが市街化調整区域の田畑です。先日亡くなった父親は、長らく農業に従事してきましたが、亡くなるまでの数年は、自身が高齢になったことや、農業を引き継ぐ予定だった市川さんが、交通事故が原因で体に障害が残ったことを理由に、農業を縮小していました。
父親が農業をやめて以降の収入源は、主に土地の賃貸料でした。市川さんが事故に遭ってから数ヵ月後、ある大手企業から県道に面した畑を隣接地とあわせて借りたいと依頼があり、農業以外の収入源を模索していた市川さんの父親は、渡りに船とばかりに貸すことにしたのです。
20年の事業用借地契約で公正証書にしてあり、借り主も名の通った会社で不安はありません。おかげで毎月定期的に地代が入ってくるようになり、それが主な生活の収入源となりました。
市川家の家族状況ですが、母親は高齢ながらも健在で、長男で独身の市川さんと同居しています。妹2人はそれぞれ20代半ばで結婚して家を出ています。問題なのは末っ子の次男で、留年を繰り返して大学を中退し、しばらく職を転々としたあと、突然失踪してしまいました。それ以来、家族が探しても見つけられず、いまも連絡手段がないままだといいます。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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