「家を売った」の記憶が再燃して大騒ぎの末
不発! ニセ営業マン作戦
認知星人のスイッチが入ると、じーじは私に数々の難題を突き付ける。私にとっては困りごとの一つだが、認知星人にとってはいたって真面目な問題なのである。
以前、固定資産税が3千万円になったとか、家を乗っ取られるからというわけのわからん(私にとっては)理由で家を売ったぞ事件があったが、最近は言わなくなっていたので安心していたが! また、「家を売った」の記憶が再燃したから大騒ぎ(実際は売ってない)。
「そういえば、家を売ったA建設から何か連絡はあったか?」
「ないよ」
「A建設に電話しろ」
しかたがないので、いつもの電話をかけるふりをしてみて、担当者が不在で今日はわからないと言ってみたものの、今回はどうにもこうにも治まらない。おまけに、パジャマの上から上着を着て「俺が直談判をしに行く」と言い出す始末。
もうどうにもならないので、奥の手の安定剤替わりのビールを献上しこの場は治めたものの、明日の朝が怖い!
案の定、翌朝起きてくるなり「今日A建設に電話しておけ」の一言。短期記憶が失われるのが認知症の症状のはずだが、じーじは思い込んだら命がけなので、納得するまで忘れない。とにかく、毎日この騒動が繰り返されたらこちらの身が持たない。家を売ってはいないということを納得してもらわねばならない。
……ピカッとひらめいた!
じーじは、外ヅラ良夫君なので、家族以外の言うことは実によく聞く。そこで、ニセの担当者を仕立てて説明してもらおう! 不動産の知識があって、じーじが好きそうなこぎれいな営業マン。いた! Hさんだ。
そこでHさんに事情を説明し、ニセの名刺をパソコンで作成し準備万端。翌日「A建設の人が日曜日に説明に来てくれるって」と言ったところ、
「何を言ってるんだ、A建設? なんで家に来るんだ? 俺にはさっぱりわからんぞ、お前は変なこと言うなぁ」
ひえ~、恐るべし認知星人。せっかくニセ営業マンやニセ名刺まで仕込んだのに。ここ数日の騒ぎをすっかり忘れているのであった。まあ、忘れてくれて何よりなので、めでたし、めでたし。
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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