
「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。
取り換えた事実を忘れのが認知症ならば…
言ってダメなら書いてみる
今朝は、6時からほぼ20分間隔でトイレに行き、そのたびに「リハパン*を取り換えてほしい」と訴える。別に失禁しているわけでもなく、リハパンはきれい。しかし、取り換えてあげないときっと怒るし……。「認知症の方に対しては、否定をしてはいけません」という法則があるので、「汚れてもいないのに何度も履き替えてもったいな~。1枚いくらすると思ってんだよ~」と、心の中で思いつつ、笑顔で応じる私ってお釈迦様!
しか~し、何回取り換えてあげても、トイレから出てくると「リハパン取り換える」と言う始末。ついにイラッときたが、優しい口調で「さっき取り替えたから大丈夫じゃないかな~」と言ってみた途端、
「リハパンぐらい好きに取り換えさせてくれないなんて、オレに死ねと言うのか~」
「(心の声)しまった……認知星人に変身中だった」

認知星人に変身中のじーじは、自分の欲求が通らないと大声を出して怒り出したり、なぜか頭を抱えて「オレに死ねというのか~」と言い出す。
……ピカっとひらめいた!
そうだ! 取り換えた事実を忘れるのが認知症だった。それならば、目から情報を入れて本人に納得してもらうように作戦変更!
リハパンに「朝取り替えたよ」と書いて、そのリハパンを履かせてみた。
20分後、効果てきめん! トイレから出てきたじーじは、何事もなかったようにソファーに座り、テレビを見ている。トイレでリハパンに書いてある文字を読んで、納得したらしい。よっしゃ~、作戦成功。
その後もトイレには行ったが、「リハパンを取り換えてほしい」とは言わず、元気にデイサービスへご出勤。介護は工夫しだいで楽しくなるのであった。
リハパン
排泄コントロールのリハビリ時に使用することから、通称リハビリパンツ。略して「リハパン」と呼ばれている。紙おむつのパンツタイプ。排尿5回相当分の吸収力がある。