「相続争いなんてテレビの中の話、うちには関係ない……」と思っている人こそ、実は多大な「争続」リスクを抱えています。そこで本記事では、弁護士兼公認会計士である眞鍋淳也氏の著書『ドロ沼相続の出口』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「遺言書の偽造問題」について解説します。

「全財産を兄に」「全財産を弟に」…どっちが本当?

<事例>

被相続人の死亡後、自筆証書遺言2通、公正証書遺言1通が見つかりました。そのうち、最初に作成された自筆証書遺言には全財産を相続人のAさんに、2番目に作成された自筆証書遺言および、最後に作成された公正証書遺言には全財産を相続人のBさんにと記されていました。

AさんとBさんは兄弟であり、相続人はこの二人だけです。Bさんは、銀行から公正証書遺言に基づき預金名義を変更し、引き出そうとしましたが、銀行は、ほかにも遺言書があることを知り、供託しました。

被相続人は、認知症を患っており、AさんはBさんが本人に無理に遺言書を書かせたのではないかと疑問を持ちます。そして、Aさんは、全財産をBさんにとする自筆証書遺言および、公正証書遺言が無効であるとして、Bさんに対して訴訟を提起したのでした。

 

 

遺言書は相続トラブルを防ぐ手段として効果的ですが、他の相続人が自らの利益となるように、その中身を偽造するおそれがあります。この事例は、遺言書の偽造が疑われる場合に、どのように対処すればよいのかを考えるうえで参考になるでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

具体的な状況をより詳しく説明すると、全財産をBさんのものとする旨の自筆証書遺言と公正証書遺言が作成された時点で、Aさん、Bさんの父親(被相続人)は、認知症を患っていました。Bさんはそんな父親を介護施設に囲い込んで、自分にとって都合のよい遺言書を作成させていたのです。

 

その後、さらにBさんは、裁判所に父親の成年後見の申立てをしました。「まだ、AがA自身に有利な遺言書を父親に作らせる危険がある」と考え、自らが成年後見人となることで、Aさんが父親に遺言書を書かせることを不可能にさせるのが狙いでした。

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ドロ沼相続の出口

ドロ沼相続の出口

眞鍋 淳也

幻冬舎メディアコンサルティング

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