「わざと大きめな声」で私が発した一言は…
ここでのポイントは、ミニカーで遊んでいるC君に聞こえるようにわざと大きめな声で「C君自身はいい子です」と自然に話すことなのです。
文句ばかり言っている陰険なタイプの自閉スペクトラム症の子でさえ、この「いい子」ということばに反応して、少しはこちらの話を聞くようになります。
「遺伝も原因の一つです。先ほどの家族歴で伺ったことから考えると多分、おじいちゃんの遺伝でしょう。お父さんも似ているところがあると思います。でも、おじいちゃんが悪いわけではありません」
遺伝の話をすると、たいていの母親は自分のことだとしても納得し、大きくうなずきますが、父親は納得しません。遺伝と言われ、自分のことを否定された気持ちになり、中にはそんなわけはないと怒鳴り始める方もいます。
発達障がいは「害」ではありません。発達障がいが遺伝だからといって、父親や母親の遺伝子が悪いものだと言っているわけではないのです。
「○ちゃんはお父さん似だね」
「口元はお母さんに似ているね」
「お母さんも体が弱いところがあったから……」
という会話がよくなされると思います。それと同じように、そのお子さんの特徴がどちらに似ているのかを述べているだけなのです。
発達障がいについて一般的に語られるようになったのは、つい最近のことです。今の親世代の多くは、発達障がいがどういうものかを知らずにこれまで過ごしてきました。ですから、受け入れることが難しいのは当然のことです。
じっくりと相談をし、納得してもらうことが必要です。今回も一度ここで中断し、父親には考えをまとめる時間を持ってもらうことにしました。
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