『Amazon Prime Video』や『Netflix』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用している人は多い。有料動画配信サービスに倣い、大手企業がサブスクビジネスを始めているが、解約率に頭を抱えるケースも少なくない。解約を止めるには、サービスの特長やメリットを正しく伝える。解約の意思が変わらないようであれば、サービスそのものの改善に取り組んでいく。デジタルマーケティングは日進月歩で変化し続けている。本連載は株式会社Macbee Planetエヴァンジェリスト・佐野敏哉氏がいまデジタルマーケティングで何が起きているか、分かりやすくレポートします。

「解約(離反)率」が新たなビジネス価値を持ってきた

インターネットの普及から、デジタルマーケティングと呼ばれるインターネット上のマーケティングが浸透し、実際のリアルなマーケティングとは異なる指標や考え方が定着してきました。

 

ちょうど10年前、2010年に米国で創刊されたマーク・ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』という有名な書籍があります。日本では2017年に販売され、当時の広告には、Amazonのジェフ・ベゾスが選ぶビジネス書の12タイトルの1冊というようなコピーが表記され、書店や電車で飾られていたので、記憶にある方も多いとは思います。自分も当時は本を手に取り、読んだことを覚えています。

 

「解約(離反)率」という指標がここ数年で重要性を増した。(※写真はイメージです/PIXTA)
「解約(離反)率」という指標がここ数年で重要性を増した。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この本はタイトルの通り、デジタルマーケティングにおいて、いかにデータを活用することが大切で、成功への近道となるかを教えてくれる、当時はデジタルマーケティングのバイブルのような存在でした。

 

その本の中で、鍵となってくる15の指標が書かれており、ここにはLTV(ライフタイムバリュー)や認知率、直帰率といった、今ではごく当たり前に指標となっている言葉が並んでいます。ここにある、ブランド認知力や顧客満足度などは、実際のリアルなマーケティングでも重要視されていますし、CLTV(カスタマーライフタイムバリュー)やROAS(リターンオンアドバタイジングスペント)などは、デジタルマーケティングになって算出しやすくなりました。これらの言葉は、インターネット普及前のマーケティングでも、指標としては存在していましたが、当時は現在に比べて浸透している言葉ではありませんでした。

 

先日、弊社の新卒メンバーに読ませてあげようと、本棚からこの本を引っ張ってきて読み返したのですが、今読むと、現在では当たり前の言葉や考え方、常識となったエッセンスがそこに存在しており、改めてこの本の凄さを理解できます。

 

書籍への賛辞の前置きが長くなってしまったのですが、久々に読み返した時に、前述した15の指標の中の3番目に「解約(離反)率」という指標があり、この言葉の重みがこの数年で変化したことを実感しました。当時はそれほど気にも止めていなかったのですが、近年この指標は大きく優先度が上がってきています。

 

背景にはやはり、所有から利用へとマーケットチェンジが行われ、解約が購入の数と同等のタッチポイントとなった事があげられるでしょう。昔は、アニメひとつとっても、DVDを一度購入すれば、その所有権は紛失や売りに出さない限り、権利はなくなることはなく、企業側も解約という行為に対して大きなケアをする必要はありませんでした。要は、買ってくれればそれで良しという時代でした。

 

一方、現在はどうでしょうか?アニメは、NetflixやAmazon Prime Videoで見る時代、そうなると好きなアニメのDVDを買うという選択肢は、既に優先順位は下がり、アニメを見たい時に、これらのサービスを契約するという判断をユーザーは行い、「見終わった」、もしくは「見なくなったら」解約をするという行為が発生します。これらのほとんどのサービスが月額制ですから、解約の選択肢は毎月発生し続け、毎月企業はケアをする必要がでてきました。

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