介護保険制度には最低限のことしか期待するな
介護職員の離職を止める方法
そうだとすると、あまり難しいことを彼らに要求すること自体に無理があります。つまり、今後、高齢者が一定数存在し、それをリカバリーするには介護職員が必要だ、というのであれば、まずやらなければならないことは、介護職員に対し、高いハードルを設けないことです。もちろん、高い給料も必要ありません。利用者や入居者に対して、介護とは介護保険制度という国が運営している仕組みあってのことなので、最低限のことしか期待しないでほしいという教育をしなければなりません。
私がホーム長だった頃、遅刻早退無断欠勤のオンパレードの女性職員がいました。理由を聞くと、子供をダシに使います。シングルマザーで子供と2人暮らしでしたが、子供が熱を出したから遅刻、子供が熱を出したから早退という具合でした。
最初のうちは、多くの職員が「若いのに子育てしながら仕事をするのって大変よね。遠慮しないで言ってね。あなたのフォローはするからね」という感じでしたが、あまりにも遅刻早退無断欠勤が頻繁なので、次第に、「子供も幼稚園でしょ。そうそう熱ばかり出すわけないのに。何かおかしいわね」という風潮に変わり、しまいには、「昨日彼女、若い男とXXにいたわよ。昨日無断欠勤しているんでしょ」ということになり、職員から総スカンを食らってしまいました。
ホーム長として、これらのことが事実であれば、容認することはできません。私は、彼女と面談を行ない、遅刻の真実について確認しました。子供が発熱したことの多くは事実のようでしたが、男性と会うための遅刻や早退の事実はあったようです。さらに、他の職員の信頼関係を回復することができなければ引き続きの勤務は難しいことを本人に伝えたところ、信頼回復に努めたいという希望があったので、いちおうの継続勤務としました。
さらに、男女の問題で子供が犠牲になるケースは多いため、一時の感情的な気持ちに流されずに、慎重に行動するべきだという話をしたのを覚えています。そして、しばらくの間、ことあるごとに「遅刻しないで会社に来れたね」「休むときは連絡ができて偉いね」という、普通の会社ではあり得ないきわめて馬鹿馬鹿しい声掛けを継続することによって、次第に遅刻や早退がなくなり、気がつくと戦力になる介護職員になることができました。