「こんなものまで!?」と驚くものも…「資産」の内訳
もう少し踏み込んで、「資産」「負債」「純資産」のそれぞれについて詳しく見てみましょう。
「資産」は企業に資金をもたらすものが記載されるのですが、資金の回収期間が長期間に及ぶか否かによって、「流動資産」と「固定資産」の2つに分類され、B/Sに記載されます(図表6)。
短期的に資金が回収できるものが流動資産、資金回収が長期に及ぶものが固定資産です。この短期・長期というのはここでは詳しく説明しませんが、だいたい1年以内に資金回収できるものが、流動資産になると思ってください。
流動資産には、資金そのものである現金や、売ればすぐに現金にできる商品・製品、債権など、短期的に資金回収が可能なものが該当します。
一方、固定資産には、事務所や社用車、パソコン等の備品など、資金回収が長期に及ぶものが入ります。
※固定資産は、固定資産そのものから収益を生むことは多くありませんが、事務所がなければ書類の保管や従業員の作業スペースがありませんから、間接的に売上をあげることに貢献しているといえます。固定資産は、長期間の企業経営を通じて実質的に資金回収に貢献していることから、資産として記載されるのです。
流動資産:1年以内に現金化される予定のものや、現金の代わりになるもの
(例)現金、銀行の預金、受取手形、製品など
固定資産:流動資産以外の資産
(例)建物、土地、敷金など
これは余談ですが、資産の部には「企業によっては特徴的な勘定科目が登場する」ことがあります。
たとえば、航空業界で有名なJALやANAといった企業の財務諸表を見てみると、固定資産の部に「航空機」という勘定科目名の資産が記載されています。各企業がどんな資産を持っているのだろう?という視点で資産の部を見てみると、「こんなものまで!?」というものも登場するので、とても面白いですよ。
勘定科目:取引を仕訳によって記録する際に、わかりやすく記録するために用いられる分類名の総称です。家計簿でいう、見出しのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
上場企業では「退職金」の記載も…「負債」の内訳
資産の次は「負債」です。負債は短期的・長期的に企業が返済しなければならない債務が記載されます(図表7)。資産と同じように、債務の返済期間が長期間に及ぶか否かによって、流動負債と固定負債の2つに分類した上でB/Sに計上することになります。返済期間が短期間のものが流動負債、返済期間が長期間に及ぶものが固定負債ですね。
流動負債には、商品を仕入れるときの代金をツケで支払った際に生じる買掛金や、固定資産を買う時の分割払いなどで生じる未払金、借入金で返済期限が1年以内に到来する短期借入金などがあります。
一方、固定負債には、返済期限が1年以上先になっている長期借入金や、返済期限が1年以上先になっている社債などが記載されます。負債については、返済期限が1年以上であることが大きな判断基準になります。
流動負債:1年以内に支払い予定のもの
(例)支払手形、買掛金、短期借入金など
固定負債:流動負債以外の負債
(例)長期借入金、社債、退職給付引当金など
ちなみに、上場企業の負債の部を見ると、「退職給付引当金」という科目が記載されていることがあります。これはいわゆる退職金の支払いに備えてお金を引き当てているものなのですが、ここから「その企業がどれくらいの退職金を支給する予定なのか」を見込むことができます。気になる企業があれば、チラリと確認してみると面白いかもしれませんね。
企業の経営状況が一目でわかる「純資産」の内訳
最後に、「純資産」を見てみましょう(図表8)。これは、負債とは違って「返済が不要な資金」のことです。
経営者が会社を作る時に入れたお金である「資本金」や、今までに上げた利益の積み重ねである「利益剰余金」などが記載されます。これらはまとめて「株主資本」と呼ばれます。
また、純資産には、資産でも負債でもないその他の項目も記載されます。本記事では、「株主資本以外の項目」と表現していきます。株主資本以外の項目には、難しい勘定科目名が多いですが、読み飛ばしていただいて構いません。
純資産の中で特に重要なのは何だと思いますか? 答えは「株主資本」です。理由は簡単で、「その企業が真に自由に使うことができるお金」だからです。
たとえば借入金と比較してみましょう。借入金は、決められた期限内に返済する義務がありますよね。借りた分のお金は自由に使えるけれども、借入金を返すタイミングでは、借入金を返すための現金を持っている必要があります。
つまり、「借りたお金は一時的に自由に使えるが、返済期限までに使った分のお金を用意しなければならない」ということです。
一方で株主資本は、そもそも返す義務がないので、自由に使うことができるお金なのです。
〈純資産のまとめ〉
株主資本:経営者が会社に入れたお金や、経営活動で生み出した利益
(例)資本金、利益剰余金など
株主資本以外の項目:資産でも負債でもない項目
(例)その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定など
なお、負債の合計額が資産の合計額を超えた際には、純資産はマイナスの値を取ることになりますが、このことを債務超過と呼びます。上場企業は、債務超過の状態が1年以上続くと上場廃止になってしまいます。債務超過の企業は非常に危険な状態にあるといえるので、純資産を見る際は、企業が債務超過に陥ってないかどうかは必ずチェックすべきです。
ただし、ベンチャー企業などの新興企業においては、事業拡大のための先行投資によって、一時的に債務超過に陥ることもあります。
また、債務超過とは対照的に、今まで利益を上げ続けてきた企業は純資産の比率が非常に大きくなります。
たとえば、ニトリHDのB/Sを見ると、純資産が非常に大きいことがわかるでしょう(図表9)。これは2019年2月期のデータですが、自己資本比率は80%を超えています。
この純資産のほとんどを占めるのが、過去の利益の積み重ねである「利益剰余金」です。32期連続で増収増益を続けるという偉業は、このような形でB/Sに表れているのです。
会計クイズに再チャレンジ
最後に、冒頭でチャレンジしていただいたクイズを覚えているでしょうか。ここまでの話を踏まえて、あらためて考えてみてください。
Q. 図表10の貸借対照表はどの業種でしょうか?(※図表1の再掲)
〈ヒント〉
●それぞれのビジネスに、どのような資産が必要か想像してみてください。必要な設備、建物、商品在庫があるかどうか…など、とにかくたくさんの要素を思い浮かべてみることが重要です。
●固定資産が大きいことに着目してみましょう。3つの選択肢の中で、固定資産が必要不可欠な業種はどれでしょうか?
では、正解を発表します。
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