弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

年収600万円だった妻の主張。「あなた、あのとき…」

【ケース2】

男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、3人の子をもうけました。夫は個人で楽器の保守管理(調律など)に関する仕事をしていました。主に音楽に関するサービスを販売する企業や楽器を設置している施設からの依頼を受けていました。


妻は専門職として勤務していて、出産・育児の際には休職(休業)しましたが、その後復職しました。年収(給与所得)は600万円でした。


やがて夫婦の仲が悪くなり、当事者間で話し合い、子3人(10歳、12歳、15歳)を妻が引き取ることにして協議離婚をしました。協議離婚の際、財産分与として夫が妻に3000万円を支払うことは合意し、履行されました。しかし養育費については、夫の収入の変動が大きいことから、明確に金額を定めることはしませんでした。


離婚後、夫は妻に毎月養育費を支払っていましたが、金額は20万円から30万円の間で変動がありました。平均すると25万円程度でした。また、妻は3年前(関係が円満であった時期)に、夫から口頭で「今年(その年)の確定申告で収入は1300万円程度に達した」「それ以外に数件は個人から受注しているものもある」ということを聞いていました。


妻としては、不当に養育費を減らされている、また、今後減らされると困ると考えるようになり、夫に対して収入を開示して養育費の金額を定めることを提案しました。しかし、夫はこの提案に一切応じませんでした。このように夫と妻で意見の対立が生じました。

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本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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