弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

「絶対に離婚しないんだからね」専業主婦の妻が…

【ケース】

男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、1人の子Aをもうけました。妻が妊娠している頃、夫は女性Bと交際を始めました。そして女性Bも妊娠し出産しました。

 

Bが生んだ子Cについて、夫は認知しました。女性Bや子Cについて、夫は妻に打ち明け離婚を求めましたが、妻は離婚に応じませんでした。

 

やがて夫婦の仲が悪くなり夫が家を出て別居するに至りました。その後、夫はB・Cと同居しています。

 

夫側は離婚調停を申し立てましたが、不成立で終わりました。夫側は離婚訴訟を提起しましたが、和解は成立せず、最終的に棄却判決で終わりました。別居が継続することになりました。

 

離婚調停・離婚訴訟と並行して、婚姻費用についても意見が対立し、妻側が婚姻費用分担調停を申し立てていました。夫は会社役員で年収(給与所得)3000万円を得ています。一方、妻は専業主婦です。


 

 

<争点(見解の違い)>

夫:婚姻費用の計算において内縁の妻Bと認知した子Cの扶養義務を反映させるべきである。婚姻費用は月額35万円となる(計算は後記)。

妻:婚姻費用の計算においてB・Cの存在を反映させるべきではない。婚姻費用は月額56万円となる(計算は後記)。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

<結論>審判における和解成立

婚姻費用の計算において子Cの扶養義務を反映させる。婚姻費用は月額46万円とする。

 

<合意成立のポイント>

1 問題点(婚外子の扱い)

本ケースにおいては、当該夫婦の子Aとは別に、夫が認知した子Cと内縁の妻(と主張された者)Bがいたので、婚姻費用の算定においてどのように反映させるかが問題となりました。

 

2 計算方法のバリエーション

調停・審判における交渉の中で検討の対象となった(主張として登場した)計算方法について最初にまとめておきます。

 

計算方法1:女性Bと子Cは反映しない(妻主張)

夫の総収入3000万円×36.5%(上限38.19%から1.69%を下げた)=1095万円(平成27年の統計データを用いた(以下同様))

夫の基礎収入1095万円×生活費指数の比率(55+100)/(55+100+100)≒666万円

婚姻費用年額666万円/12≒56万円

 

計算方法2:子Cは反映する(結論)

夫の基礎収入1095万円×生活費指数の比率(55+100)/(55+100+100+55)≒548万円

婚姻費用年額548万円/12≒46万円

 

計算方法3:子Cと女性Bを反映する(夫主張)

夫の基礎収入1095万円×(55+100)/(55+100+100+55+100)≒414万円

婚姻費用年額414万円/12≒35万円

次ページ重婚的内縁は「法的に保護されるものではない」けど…

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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