弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

夫と妻の意見は真っ向から対立。結論は意外にも…?

<結論>調停成立

不動産の賃料収入を婚姻費用算定の基礎とはしない。婚姻費用は月額20万円とする。

 

<合意成立のポイント>

 

1 特有財産からの賃料収入の扱い

収益不動産が夫の特有財産であることについては、夫・妻の意見は一致していました。賃料収入については、金銭と物件の管理を夫が行っていないことと、実際に夫婦の家計にあてていたことはない(分離して管理されていた)ことから、家計との関連がほぼない状態といえました。

 

また、妻が収益用建物の掃除をしたのはごく稀にあっただけで、定期的な業者の掃除と比べるとほとんど経済的な貢献とはみられないといえる状態でした。そこで、婚姻費用の算定において賃料収入を夫の収入として扱わないこととなりました。その結果、夫の給与収入だけを基礎として婚姻費用を算定しました。

 

2 計算式

具体的な計算内容は次のとおりです。

 

給与所得900万円×基礎収入割合39.19%≒353万円

(平成27年の統計データを用いた)

353万円×(55+55+100)/(55+55+100+100)≒239万円

239万円/12≒20万円

次ページ年収600万円だった妻の主張。「あなた、あのとき…」

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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