別居中に夫が不倫…婚姻費用めぐりバトルに
【ケース】
男性(夫)と女性(妻)は婚姻しました。やがて夫の不貞が原因で夫婦の仲が悪くなり、妻が子(0歳)を連れて家を出て別居するに至りました。
夫と妻の間で離婚と婚姻費用について意見が対立し、それぞれが離婚調停と婚姻費用分担調停を申し立てましたが、離婚調停は不成立となりました。婚姻費用調停では、標準算定表により、婚姻費用を月額29万円(28~30万円のゾーン)と定める調停が成立しました。
夫側は、有責配偶者であるために自ら離婚請求訴訟を申し立てることはしませんでした。そこで、婚姻が解消されないまま別居する状態が続きました。
その後、夫は、不貞の相手方とは別の女性Aと交際するようになりました。女性Aが夫の妊娠したのを機に、夫とAは同居(同棲)するようになり、その後、Aは子Bを生みました。夫は妻に対して婚姻費用を減額することを要求しました。しかし、減額の可否について意見が対立しました。
<争点(見解の違い)>
夫:女性Aと子Bの扶養義務を負担している。婚姻費用を減額すべきである。婚姻費用は月額24万円となる(計算は後記)。
妻:夫とAの関係は重婚的内縁であり、Aと、その両者の間に生まれたBの存在によって妻に不利益が及ぶのは妥当ではない。婚姻費用は減額すべきではない(月額29万円を維持する)。
<結論>審判における和解成立
AとBの扶養義務を婚姻費用に反映させて減額する。婚姻費用は月額25万円とする(計算は後記)。
<合意>成立のポイント
1 夫の男女関係の不当性
夫とAとの関係は、既婚者と婚外異性の男女関係なので、形式的には不貞や重婚的内縁といえるものでした。しかし、夫・妻の関係悪化により別居している時に交際が始まっていました。
夫とAの交際が始まった頃には、夫・妻との間での連絡は途絶えており、お互いに「共同生活をする相手」として認識しているとはいえない状態でした。法的には破綻、あるいは形骸化していると認められる可能性が高いと思われました。そこで、夫がAやBに対して負っている扶養義務を婚姻費用に反映させるべきであると考えることになりました。