自宅の新築から8年後に離婚…敷地めぐりドロ沼化
【ケース1】
男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、2人の子をもうけました。婚姻から16年後に夫婦は住宅を新築しました。この時、夫の父Aの協力を得て、Aが所有している更地の上に夫婦の家を新築しました。権利金その他の名目で一時金を授受することはありませんでした。
Aが土地の貸与(使用貸借)を始めた時に、Aは、「当該土地(敷地)を夫(長男)に相続させる」内容の遺言を作成するとともに、夫(長男)以外の2人の子にもそれぞれ約1000万円程度の財産を贈与しました。そして税務署に相続時精算課税選択届出書を提出しました(生前贈与について、税務上将来の相続において承継した扱い(相続税の課税対象)とする手続)。
その後、夫からAに、土地の固定資産税額相当の金銭を定期的に支払っていました。
建築資金3500万円のうち、頭金の2000万円は婚姻後に夫婦が貯蓄した預貯金から支出して、残りの1500万円は住宅ローンによりまかないました。自宅の新築から8年後に、夫婦の仲は悪くなり、離婚する方向で協議が進みました。しかし、財産分与における敷地の利用権原の扱いに関して意見が対立しました。
住宅以外の夫婦の財産としては夫名義の預貯金が6500万円ありました。住宅ローンの残債は少なくなっていて、完済に近くなりましたが、建物自体の評価額はとても低いものでした。
<争点(見解の違い)>
夫:土地はA(父)の好意で利用できており、利用権原の取得は夫婦の協力によるものではない。敷地の利用権原は分与対象財産に含まれない。分与額は3250万円である。
妻:敷地の利用権原も分与対象財産に含まれる。敷地の更地としての評価額は約8000万円であり、使用借権の価値は更地の20%なので1600万円となる。分与額は4850万円である。