老人ホームは自宅にいるより安心安全
さらに、老人ホームの場合、シフト制で職員が働いているため、各シフトに対する役割分担が明確になっています。逆に言うと、各シフトは明確になっている役割分担を全うしなければならず、その役割分担は、担当シフトがどのようなことがあってもやり遂げなければなりません。正確に言うと、それは会社が決めているのではなく、職員間での暗黙の了解になっているということです。
「今日の夜勤者は誰なの?おしぼりを洗っていないじゃない」とか「今日の早番は誰?記録(介護記録)が終わっていませんよ。記録(介護記録)を完了させてから帰ってくださいね」というように、他のシフトの職員から、暗に自分の役割は完了させろという意思表示を受けるのです。だから、朝8時に朝食がスタートせず、その後も工程が遅れようものなら、その原因を追及され、ひどい場合は多くの職員から責められるケースもあります。よって、モーニングケアが4時ごろから始まるという事態が起こるのです。
我慢しなければならないこともあります
もうおわかりのように、老人ホームという場所は、総じて安全かつ安心な場所だと思います。24時間にわたり、職員が見守り、必要があれば手はいつでも差し伸べられます。また、入居者同士での見守りや支援も存在します。この点から言うと、自宅(独居や老々世帯)にいるより、はるかに安心安全です。
しかし、その一方、ホーム運営は全体最適を最優先して行なわれるケースが多いため、自分の都合や嗜好は無視される場合も少なくありません。つまり、我慢することも多いということです。
老人ホームの良し悪しは、実は大部分がここにあります。自分にとって我慢することが多いホームは悪いホームであり、我慢することが少ないホームは良いホームということになります。我慢の原因は、当然、人それぞれ。Aさんには何ともないことが、Bさんには我慢ができないこともあると思います。
我慢ができるということは、自分の能力で我慢を解決できるかどうかにもかかっています。たとえば、「食事が不味い(自分の好みに合わない)」という場合、食事を改善してほしいと訴えても、簡単に改善はしてくれません。なぜなら、全体が最適になるよう味やメニューを決めている関係で、少数意見などは無視されてしまうからです。したがって、老人ホームでストレスなく生きていくためには、「食事が不味いのは仕方がない。それならば、自分の能力で不味い食事を克服しよう」という気持ちが大事です。「岩ノリの佃煮」や「キムチ」「紀州の梅干し」など、自分で食事が楽しくなるような食品を用意するなどの対策を自然にできる人は、ストレスはかかりません。