新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

入居者獲得で熾烈な競争が始まった介護業界

乱立してしまった老人ホーム業界の今後

 

現在の老人ホーム業界は、雨後のタケノコのように大小さまざまな老人ホームが林立し、入居者獲得に熾烈な競争をしています。地域によっては、半径3キロ圏内に10ホーム以上あるところもあります。

 

入居希望者にとって選択肢が多いのは良いことですが、今はその弊害のほうが強く出ています。1つは、介護職員の確保です。多くの老人ホームにとって介護職員の確保に莫大な時間と費用がかかっています。そのために多くの老人ホームの収益は悪化し、内情は火の車、なんとか金融機関からの借り入れで食いつないでいるという脆弱なホームもけっして少なくありません。いつ、どこの老人ホームが倒産しても、まったくおかしくはないという状態です。

 

介護業界は入居者獲得競争が始まっている。(※写真はイメージです/PIXTA)
介護業界は入居者獲得競争が始まっている。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

もちろん老人ホーム事業者側も馬鹿ではないので、具体的な手を打ってきています。今のトレンドはM&Aです。M&Aを行なうことで強い老人ホームはより強くなり、逆に弱い老人ホームは倒れる前に強いホームに吸収されるので、倒産廃業を回避できます。結果、入居者に対するダメージを最小限に抑えることができています。したがってM&Aによる一定の成果はあると私は考えています。

 

しかし最近では、このM&Aにも陰りが見えてきています。なかなか話がまとまらなくなってきているのです。まとまらない理由は1つしかありません。条件の折り合いがつかなくなったことです。買い手側の条件が厳しくなり、売り手側の条件とマッチしません。平たく言うと、買い手側の事業に対する査定が厳しく、売り手側が思うような値段がつかないのです。さらに取引をまとめるために事業の全部ではなく、一部分だけの譲渡というケースもあるようです。

 

老人ホーム事業の難しさ

 

老人ホーム事業の難しさの1つに、多くの他の企業のような経営のスケールメリットを享受できないもどかしさがあります。老人ホームの中にも、全国的に多店舗展開をしている大企業が存在します。読者の皆さんもよくご存知の企業もあるはずです。しかし他の産業と比べ、多店舗展開をしているにもかかわらず、その規模のメリットをうまく享受できないことがあります。

 

最たるものが「人事」です。つまり職員のホーム間異動が非常に難しいのです。私は介護の世界では、人事を制する企業が勝ち組になれると言っています。当然、経営がうまくいっている企業は、人事制度がうまく機能しています。

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誰も書かなかった老人ホーム

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