新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

人を制する企業が介護を制する

当該ホームのホーム長などの管理職が会社の人事に対し「NO」と言うケースもけっして少なくありません。その職員がいなくなると、自分のホームの職員から異論が出てきて管理職が困るからです。会社のことよりも自分のホームのこと、自分のホームのことよりも自分自身のこと。単に精神的に未熟な職員が多いからではないかと言われてしまえば、まさにその通りなのですが、これが介護業界に蔓延(はびこ)っているごくごく一般的な日常的な思想なのです。

 

小嶋勝利著『もはや老人はいらない』(ビジネス社)
小嶋勝利著『もはや老人はいらない』(ビジネス社)

よって、多くの店舗数を誇っている老人ホームにおいても、介護職員がAホームは多い、Bホームは足りない、Aホームは求人コストが低い、Bホームは求人コストが高いというようになり、まったく別の組織体であるかのような運営にならざるをえません。

 

もちろん、この人事運営がうまくいっているホームもあります。ある地方都市に拠点を構える老人ホームの場合、比較的コストの安い方法で地元の介護職員を大量採用し、自社で教育を施した後、大都市圏にある自社の老人ホームに介護職員を異動させます。よくよく調べてみると、系列に介護の専門学校を用意し、学生のうちから自社の企業教育を行ない、言葉は悪いですが洗脳をしている雰囲気もあります。ここに時間と費用を使っていました。つまり先に苦労するか、後で苦労するかということだと思います。

 

かつてスーパーの雄であったダイエーにも大学がありました。トヨタ自動車にも高校や専門学校、大学があります。最近では日本電産が京都の大学を買収し、技術者の育成を目指しているのを新聞記事で知りました。

 

要は、力のある企業は人材を若いうち、つまり中学生や高校生のうちから青田買いし、自社の教育機関で教育をした上で、会社に対するロイヤリティの高い人材として企業運営に貢献できるようにしているのです。

 

人を制する者は介護を制する。他の業界にも同じことが言えるのですが、特に介護業界の場合、介護職員の質を考えると、このことはきわめて重要なことだと思います。しかし多くの介護事業者の経営者は、この問題に真剣に取り組んでいるようには見えません。私は介護事業者に限った話をするなら、介護職員の人材教育について総論では賛成、しかし各論に入ると興味なしというのが実際の現実だと思っています。今の介護事業者に希望を持つことは難しいと思います。

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