新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

自分の母親を入れることができる老人ホーム

「クダモノ」と発言していた経営者の質の問題

 

私がある老人ホームに見学に行った時の話です。その経営者から、うちの「果物」を見ていってくださいと言われたことがあります。案内された部屋にはベッドが何台もあり、そこには胃婁の高齢者が何人も横たわっていました。その時、彼の言った「果物」の意味がわかりました。彼は、「果物」ではなく「管者(くだもの)」という意味で言っていたのです。つまり、胃瘻増設により、管が体から出ているから「管者」と呼んでいたのです。悪びれる様子もなく、平気で「クダモノ」と連呼しているその経営者の神経を疑わざるをえませんでした。

 

当時は、彼のような老人ホームの経営者は少なくありませんでした。家族の厄介者を預かってやっているのだという考え方がまだまだ根強くあった時代です。その頃に介護事業を始めようと決意した経営者の創業時の想いを聞くと、次のような動機が多く聞かれます。「自分の母親をある介護施設に入所させたところ、酷い扱いを受けた。自分の母親を入れることができる質の高い老人ホームを作らなければならないと思いました」といった話です。

 

今から20年以上前は、本当に老人ホームは酷いものでした。その中で、徐々に心ある経営者が介護事業に興味を持ち、将来性を感じ、事業に参入してきたのです。

 

しかし、ことはそう順調には進みません。今度は、その経営者の思いが強すぎて、介護職員が奴隷のようになってしまったのです。経営者の行きすぎた入居者至上主義が介護職員を追いつめ、入居者の権利意識を助長させたことは間違いありません。その結果、介護職員は馬鹿馬鹿しくなって違う仕事を求めて離職していきました。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

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