「10/26~11/2のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・先週の米ドル/円は105円割れ。米金利が上昇、米国株は一進一退となったことからは説明しにくいこの一因は、このところ「小動き過ぎた」ことの反動か。
・もう一つ注目されるのは米大統領選挙年の米ドル/円が小動きから大相場へ「豹変」してきた「アノマリー」の影響。
・単なる小動きの反動に伴う一時的な米ドル/円急落か、それとも「アノマリー」通りの米ドル一段安大相場が始まっているのか。見極めの一つの目安は104円割れの有無。
小動きが続いてきた米ドル/円の急落…その理由とは?
先週の米ドル/円は週半ばから105円を割り込み、一時104円前半まで急落しました(図表1参照)。小動きが長く続いてきた米ドル/円が急落したのは、一体なぜなのでしょうか。
米金利の低下から、米ドルが急落したかといえば、むしろ逆でした。米金利、たとえば10年債利回りは、6月前半以来の0.8%を大きく上回る水準まで、大幅な上昇となったのです(図表2参照)。
では米国株はどうだったかといえば、こちらは一進一退での推移となりました(図表3参照)。
このような米金利、米国株の動きにもかかわらず、米ドル/円は、なぜ長く続いてきた小動きから、先週105円割れへの急落となったのでしょうか。それは、上述のように「小動きが長く続き過ぎた」反動であったと考えられます。
米ドル/円は9月下旬以降、すでに約1ヵ月も105~106円、1円程度の値幅での推移が続きました。米ドル/円の「小動き化」はよく知られるところですが、月間値幅で見た場合、1円程度の値幅はさすがに記録的な小幅といえます。
最近の月間値幅が小幅にとどまった例としては、2019年12月の1.3円程度です。12月は、クリスマス休暇などの影響もあり、例年小動き化しやすい月ではあります。ところが、クリスマスでもない今年10月の米ドル/円値幅は、先週までの段階で1.1円程度にとどまっていました。
以上のように見ると、米金利の大幅な上昇を尻目とした米ドル/円の105円割れといった急落、また米国株も一進一退となる中での米ドル/円105円割れの理由の一つは、小動きの反動が結果的に米ドル下落をもたらしたことではないでしょうか。
米ドル/円105円割れ…その原因は?
11月の米大統領選挙が近付き、先週はまさに米大統領候補同士の2回目にして最後の討論会が行われました。では、先週の米ドル/円105円割れは、それと関係があるのでしょうか。
大統領選挙の見通しに影響があったなら、為替以上に株価に影響がしそうなものですが、上述のように米国株は一進一退に終始しました。米大統領選挙の、とくに為替への影響といったことを考えるなら、「アノマリー」に注目する必要がありそうです。
米大統領選挙年の米ドル/円には、長く小動きが続くものの、選挙前後に一方向への大相場へ「豹変」するプライス・パターンを繰り返してきたといった、米大統領選挙年の米ドル/円「アノマリー」があります。
その意味では、先週の米ドル/円の105円割れも、小動きから米ドル一段安への「豹変」といった「アノマリー」の可能性も気になるところでしょう。2016年の「トランプ・ラリー」、2012年の「アベノミクス円安」と呼ばれたような、米大統領選挙前後から一方向への大相場が始まる「アノマリー」は、今年も機能するのでしょうか。
米大統領選挙年に米ドル/円が大相場に「豹変」する一つのシグナルとして、90日MA(移動平均線)からのかい離率が±2%をブレークすると、そのまま大きく拡大に向かうということがありました(図表4参照)。
足元の米ドル/円の90日MAは106.1円程度。従って、104円を割れると、90日MAからのかい離率はマイナス2%以上に拡大する計算です。アノマリー通りなら、104円以上に大きく戻らない、米ドル一段安の大相場が始まっていることになります。
先週の米ドル/円105円割れが、単なる小動きの反動に伴う一時的な動きに過ぎないか、それとも米大統領選挙年の米ドル/円特有の小動きから一方向への大相場に「豹変」が始まったのか、その見極めの目安の一つとなるのは、104円割れの有無だといえるでしょう。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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