「11/2~11/8のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・今回の米大統領選挙は、郵便投票の開票に時間がかかることなどから、勝敗の決着がかなり遅れる可能性がある。
・実際に決着まで1ヵ月もかかった2000年の大統領選挙では、米ドル/円は、結果的に決着後の米ドル高を先取りした形で、投票終了直後から米ドル高の動きとなっていた。
・選挙の勝敗とは別に、過去の経験を参考にすると、米ドル/円104円割れの有無は、大統領選挙後の米ドル/円のトレンドを示唆している可能性があるだけに、引き続き注目。
決着まで1ヵ月かかった「2000年の大統領選挙」を検証
今週、いよいよ4年に一度の米大統領選挙が行われます。今回は、米大統領選挙を受けて、為替相場がどんな動きになるのか考えてみましょう。
今回の大統領選挙は11月3日に投票が行われます。ただ、いわゆる「コロナ問題」の影響などで、開票作業に時間のかかる可能性のある郵便投票が急増していることなどもあり、勝敗の決着には時間がかかるとの見方が有力です。
では、来年以降の米大統領が決まらないといった「異常事態」の長期化が現実になったなら、マーケットにはどんな影響があるのでしょうか。不透明感を懸念する株式市場などは急落するのでしょうか。
実際に、2000年の米大統領選挙は、勝敗の決着がすぐにはつきませんでした。その際のマーケットの動きに注目してみます。この2000年の米大統領選挙の投票日は11月7日でした。それまで小動きが続いていた米ドル/円は、終値ベースで見ると、この日に107円で底を打ち、その後一段高が始まるところとなったのです(図表1参照)。
この2000年の米大統領選挙で、為替政策はとくに争点ではありませんでした。ただ、2001年から始まったブッシュ政権において、大統領の経済政策顧問となる人物は、当時の米経済の課題の一つだった財政赤字の解消策として、日本などからの資本流入拡大が必要で、そのためには米ドル高が必要と主張していました。
為替相場は、1ヵ月後のブッシュ勝利を先取りしていた
事実として、2000年の米大統領選挙では、勝敗の決着がつくまで一ヵ月以上もかかりました。ただし、少なくとも為替相場を見ると、結果的には投票日の直後から、当時のブッシュ共和党の勝利で、米ドル高政策が実行されることを織り込んだような動きとなっていました。
以上のように見ると、2000年の米大統領選挙では、勝敗の決着まで1ヵ月以上もかかる異常事態となったものの、為替相場を見る限り、あたかも1ヵ月後のブッシュ勝利を先取りするような動きが、投票日直後から起こっていたわけです。
さて、今回はそんな2000年以来の、米大統領選挙の決着がすぐにつかない「異常事態」になる可能性が警戒されています。ただ、2000年のケースを参考にすると、マーケットは表面的な選挙の勝敗の決着がつく前に、それを先取りした動きになっている可能性もあります。
引き続き「104円」ブレーク巡る攻防に注目
米ドル/円は、大統領選挙が近付くなかで105円を下回ってきました。ただ、90日MA(移動平均線)を2%下回る水準である104円は、先週までのところ割り込むに至っていません(図表2参照)。
米大統領選挙年の米ドル/円は、選挙を前後して、小動きから一方向への大相場へ「豹変」を繰り返してきましたが、その目安の一つは、90日MAからのかい離率が±2%をブレークするということでした。同かい離率±2%をブレークすると、かい離率は±5%以上へ急拡大に向かっています。
以上からすると、90日MAを2%下回る水準である104円のブレークは、選挙の勝敗とは別に、選挙後の米ドル/円のトレンドを示している可能性があるだけに、引き続き注目されることになるのではないでしょうか。
下落リスクが目立っている「米国株」、今後の動向は?
ところで、先週にかけて米国株の下落リスクが目立ってきました。そんな米国株の動向は、過去半年程度の関係を前提にしたら、米ドル・ストレート、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルの行方を決める可能性があります。
図表3、4のように、3月の「コロナ・ショック」一段落後、ユーロ/米ドルなどは米国株、とくにNYダウと高い相関関係が続いてきました。さて、この関係がこの先も続き、仮にNYダウが2万5千ドルを目指し一段安になるなら、ユーロ/米ドルも1.12ドル割れを目指す見通しになります。豪ドル/米ドルの場合なら、0.67ドル程度を目指すといった見通しです。
逆に、米ドル高へ向かう可能性を考えてみましょう。
最近の関係を前提とした場合、NYダウが2万9千ドルを大きく上回るようなら、ユーロ/米ドルもこの間の高値である1.2米ドルを更新する見通しになります。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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