弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

妻に支払った額は結局…?敷地離婚、思わぬ結末

<結論>裁判外の和解成立

敷地利用権原は分与対象財産とはしない。建物は夫に分与する(夫所有を維持する)。夫が妻に3500万円支払う。

 

<合意成立のポイント>

 

1 土地(建物敷地)の貸与の趣旨

住宅敷地をA(父)が夫(長男)に貸与する際、他の子にも財産を贈与して、かつ相続時精算課税届出をしていたことから、敷地の貸与は「親子間の相続の前倒し」という趣旨であることが読み取れました。

 

さらに、敷地を貸与した時期が婚姻から約16年も経過した時期であったので、「婚姻に伴ってA((義)父)が夫婦に対して提供(贈与)した」という趣旨は読み取りにくいものでした。結局、明らかに「相続の前倒し」という趣旨であると判断できるものでした。そこで、敷地利用権原は、夫の特有財産であり、夫婦共有財産ではないという方向になりました。

 

2 他の事情の影響

建物建築資金には夫婦の収入による蓄財が用いられていましたが、建物自体の価値は、評価としてはゼロに近くなっていました。とはいっても、その建物を引き取る夫は、現実に居住することができる立場になります。そこで、妻への分与額は、住宅・敷地以外の夫名義の財産の半額(3250万)よりも多少上乗せすることで、合意に達しました。ほかにも、離婚後の妻や子の生活費の上乗せという配慮(扶養的財産分与の趣旨)もあったと思われます。

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本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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