弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

父からお金を受け取っていた夫婦…離婚でどうなる?

【ケース1】

男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、1人の子をもうけました。婚姻前から、夫は父Aとふたりでプラスチック加工業を行っていました。

 

仕入れや販売などはすべてAの名義で行っていました。婚姻後は、妻も業務に加わるようになりました。夫と妻は、Aから給与の支給を受ける形となっていましたが、雇用契約書を交わすような正式な扱いではありませんでした。実際の給与としての支給額は生活の最低額で、夫婦の家計に必要がある場合にはAから必要額の支給を受けるという状況でした。2人が1年あたりに支給を受けた合計額は500万円でした。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

事業用資産である小規模な工場(倉庫)、機械類や、売上を保管し、経費を支出する預金はすべてA名義となっていました。一方、夫婦名義の預貯金はほとんどない状態が続いていました。

 

やがて、夫の不貞が発覚することで夫婦の仲が悪くなり、妻が子を引き取って離婚するという方向で協議が進みました。夫婦が就業している期間は10年に達していました。財産分与に関して意見が対立しました。

 

 

<争点(見解の違い)>

夫:分与対象財産は夫婦名義の預貯金だけである。

妻:A名義の事業用資産は実質的な夫婦共有財産であり、分与対象となる。

 

<結論>裁判上の和解成立

離婚する。A名義の事業用資産のうち、一定の部分を分与対象財産とする。過去の夫婦の賃金として想定される妥当な金額は合計8000万円(2人の合計年収800万円の10年分)である。

 

実際に支給された金額は合計5500万円である。A名義の財産のうち、差額の2500万円相当は、実質的に夫婦の協力によって築いた財産として、分与対象となる。妻の寄与割合は50%である。Aの事業用資産より妻に1300万円を支払う。

次ページ【なるほど】「1300万円」もの大金を支払った背景には…

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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