父からお金を受け取っていた夫婦…離婚でどうなる?
男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、1人の子をもうけました。婚姻前から、夫は父Aとふたりでプラスチック加工業を行っていました。
仕入れや販売などはすべてAの名義で行っていました。婚姻後は、妻も業務に加わるようになりました。夫と妻は、Aから給与の支給を受ける形となっていましたが、雇用契約書を交わすような正式な扱いではありませんでした。実際の給与としての支給額は生活の最低額で、夫婦の家計に必要がある場合にはAから必要額の支給を受けるという状況でした。2人が1年あたりに支給を受けた合計額は500万円でした。
事業用資産である小規模な工場(倉庫)、機械類や、売上を保管し、経費を支出する預金はすべてA名義となっていました。一方、夫婦名義の預貯金はほとんどない状態が続いていました。
やがて、夫の不貞が発覚することで夫婦の仲が悪くなり、妻が子を引き取って離婚するという方向で協議が進みました。夫婦が就業している期間は10年に達していました。財産分与に関して意見が対立しました。
<争点(見解の違い)>
夫:分与対象財産は夫婦名義の預貯金だけである。
妻:A名義の事業用資産は実質的な夫婦共有財産であり、分与対象となる。
<結論>裁判上の和解成立
離婚する。A名義の事業用資産のうち、一定の部分を分与対象財産とする。過去の夫婦の賃金として想定される妥当な金額は合計8000万円(2人の合計年収800万円の10年分)である。
実際に支給された金額は合計5500万円である。A名義の財産のうち、差額の2500万円相当は、実質的に夫婦の協力によって築いた財産として、分与対象となる。妻の寄与割合は50%である。Aの事業用資産より妻に1300万円を支払う。