考えられる治療法① 初期なら点眼治療も
白内障の治療法について簡単にご説明します。
白内障の治療法は、点眼薬(目薬)で行う「点眼治療」と、濁った水晶体を取り除いて代わりの眼内レンズを入れる「手術治療」に大別されます。ただし先にお断りしておきたいのは、白内障を根治できる治療法は今のところ手術だけだということです。白内障治療が急速に進化した現代でもなお、水晶体の濁りを取り除いて、よく見える眼を復活させる方法は手術以外に見つかっていないのです。
点眼による白内障の予防、進行抑制効果については、手術と同等の基準を満たす薬効評価がなされておらず、効果については限定的です。
しかし「根治はできなくても、しばらくは白内障の進行スピードを抑えて過ごしたい」という場合があります。例えば「まだ自覚症状がないので手術は先にしたい」「ほかの病気の治療中だから終わってからにしたい」「仕事が忙しくて休めない」というときなどです。
強度近視の方や老眼による症状が強い方のなかには「コンタクトレンズをつけるのが面倒」「老眼鏡が合わない」といった理由で白内障手術を早めに受けたいと希望される方がいらっしゃいます。
しかし、白内障手術の技術は日進月歩です。最近は眼鏡を使用せずに遠くも近くも見えるような多焦点眼内レンズも開発されていますが、メリットがいろいろある反面、デメリットもあります。5年後、10年後にはもっと良いレンズが出ているかもしれません。
ある患者さんの例を紹介します。
検査をすると白内障は軽度のもので、お困りの症状は老眼によるものでした。話を聞くと、若い頃から眼が良くて眼鏡をかけたことはなく、老眼鏡を使ったこともないということでした。他院で手術を勧められたので、手術をする気持ちだったようですが、「まずは眼鏡を使用しませんか? それでも不自由なら手術をするということでもいいのではないですか?」とご提案し、眼鏡の使用で快適な生活を送られています。
ご友人などの情報から年齢的にも白内障を意識し、「医者からも手術を勧められたから」という理由で手術をしてしまう方もいます。手術をするときは、白内障の進行具合、年齢、身体の状況、家族構成、ライフスタイル、医療の進歩など、さまざまなことを総合的に判断し、手術以外の代替案の有無についても考える必要があるということを理解してほしいと思います。
処方される点眼薬には、次のようなものがあります。
1 ピレノキシン製剤
白内障を引き起こす物質の一つに「キノイド物質」があります。キノイド物質は水晶体中の水溶性タンパク質を不溶性に変え、それが濁りとなって水晶体に沈着します。ピレノキシン製剤はこのキノイド物質の成長を防ぎ、水晶体の混濁化を抑制して白内障の進行を遅らせるための点眼薬です。
初期段階の白内障には有効とされていますが、眼がん瞼けん炎えん(瞼まぶたに生じる炎症)や結膜炎、接触皮膚炎などが副作用として起きる場合があります。かゆみや刺激感、白目や顔が赤くなる、目やにが出るなどの症状に気づいたときは使用を中止し、眼科医に相談してください。
2 グルタチオン製剤
グルタチオンは肝臓や筋肉など、体内に広く分布する抗酸化物質です。グルタチオン製剤は、白内障の進行に伴って減少するグルタチオンの量を補い、濁りの原因である不溶性タンパク質の増加を抑えます。
ピレノキシン製剤と同じように、水晶体の透明性をできるだけ保つために働く点眼薬ですが、やはり刺激感や充血が起きる場合がありますので、その際は眼科医に相談しましょう。