白内障を「予防する」ことはできるのか?
患者さんに「白内障は予防できますか?」「白内障にならないように気を付けることはありますか?」といった質問を受けることがあります。
白内障は高齢になれば誰もがかかる眼の病気で、いわば老化現象のようなものです。発症を100%防ぐのは非常に困難といえます。それは老眼を免れる人がいないのと同じです。
しかし、発症をできるだけ遅らせるために、あるいは発症した白内障の進行スピードを緩やかにするために、日常生活で心がけると効果を期待できることはいくつかあります。白内障の「原因」と考えられている危険因子をできるだけ避けて日常を送るのです。
白内障発症の因子になると考えられているものを挙げながら、日常で予防する方法を紹介しましょう。
1 紫外線を防ぐ
紫外線は体内に入ると活性酸素というものを発生させ、身体の酸化を促します。水晶体に含まれているタンパク質が酸化すると、変質して濁ってきます。これが白内障の正体です。
眼は光を取り込むことによって、物が見える状態になります。とりわけ水晶体は光が集まる部分ですから、光のなかに含まれる紫外線の影響も避けることができません。
したがって、強い紫外線を長時間にわたって浴び続けるのは避けたほうが望ましいと考えられます。紫外線は若年性白内障の要因にも挙げられますので、若いうちから注意を払ったほうがいいでしょう。
できるだけ、眼に入る紫外線の量を少なくするためには、紫外線カットの機能を持つサングラスや、つばの広い帽子などを用いるのが効果的です。
2 喫煙しない
喫煙が白内障の発生リスクを上昇させることはすでに実証されています。喫煙で発生する窒素酸化物が水晶体のタンパク質や、水晶体内部に存在するα-クリスタリンという特別な種類のタンパク質に悪影響を及ぼすと考えられています。
まだ詳しく解明されていない部分もありますが、健康被害の見地からも、たばこが「百害あって一利なし」の有害物質であることは皆さんご存じのとおりです。
たばこに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させて血流障害を引き起こしますし、たばこの煙にはビタミンCを破壊する成分が含まれています。研究では1本吸うごとに体内から25~70㎎のビタミンCが減少するという数値も出ています。喫煙の習慣はできるだけ早くなくしましょう。
3 飲酒は適量がベスト
10年ほど前、オーストラリアの研究機関が「アルコール摂取と白内障の発生率に関連性はあるか」という研究を行ったことがあります。その報告によると、アルコール摂取と白内障手術のリスクには、関連が見られることが分かりました。
大量に飲むのはもちろんよくありませんが、一方で、まったく飲まない場合も白内障手術の可能性が増加する傾向がありました。そして適度な飲酒は、禁酒または大量のアルコール摂取と比較して、白内障手術の発生率が50%低くなると結論付けています。
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」では、年齢による違いはありますが、適度な飲酒量は「1日平均純アルコールにして約20g」と定義しています。これは500mlのビール1本分、日本酒1合、ワインは200ml、ウイスキーだとダブルで1杯です。飲めない人は無理に飲む必要はありませんが、適量の飲酒で白内障を遠ざけましょう。
4 糖尿病に気を付ける
糖尿病にならないよう気を付けることは、白内障を予防する意味でもとても重要です。糖尿病は30~40代でも糖尿病性白内障を引き起こします。
また最も多くの人が発症する加齢性白内障も、糖尿病によって進行スピードが速まることが指摘されています。日頃からバランスの良い食事と適度な運動を心がけ、健康診断を定期的に受けるなど、糖尿病を患わないよう注意してください。
5 抗酸化作用のある食べ物を摂る
抗酸化作用のある食べ物を積極的に摂取することで酸化による水晶体の混濁の予防効果が期待できます。栄養素としてはビタミンCを多く含むもの(果物・野菜・緑茶・焼きのりなど)、ベータカロチンやルテインを多く含むもの(緑黄色野菜など)、ゼアキサンチンを多く含むもの(緑色野菜など)が白内障予防に効果があるとされています。