白内障手術の「手術前検査」…主な目的は3つ
白内障手術に関わる検査は主に、手術に先立って行う「術前検査」、手術中に行う「術中検査」、手術後の眼の状態を確認する「術後検査」の3種類です。ほかに手術直前の血圧測定などもありますが、これは手術による緊張で血圧が上がってしまう方がいるために行うものです。
このうち、誤差のない正確な手術を遂行するために重要なのは、「術前検査」と「術中検査」の二つです。ここではまず、「術前検査」についてご説明しましょう。
手術前検査には、いくつかの目的があります。まず「水晶体の濁りの度合いや位置を確かめる」ことが最も基本的な目的です。手術で切除すべき〝敵〟の状況を知る、といったところでしょうか。それらの状態により、手術の難易度も変わってきます。
次の目的は「白内障以外の眼の病気がないかどうかを確かめる」ことです。重大な眼の病気があれば、白内障と診断されたときの検査ですでに発見できているはずですが、ここでは手術を想定のうえで再び精査が行われます。
例えば眼底や視神経に疾患(病気)が隠れていた場合、白内障手術を行っても視力や、かすむ、二重・三重にダブるといったものの見え方が、思うように回復しないこともあります。
そして、最後の目的は「手術前検査により適切な眼内レンズの種類や度数を決定する」ことです。眼内レンズの種類の選択は、基本的に、患者さんが術後にどのような見え方を実現したいかを聞き、眼科医がそれを実現するためにふさわしい眼内レンズを提案して、相談を重ねながら実際に用いるものを決定するという工程で行われます。その際、医師が提案のよりどころとするのが手術前検査の結果と、患者さんに聞いた生活スタイルや、見えるようになったら実現したいことの内容です。
例えば、結果によっては「この眼内レンズでは患者さんの希望する見え方が実現しにくい」と判明することがあります。また、患者さんの眼の形状によっては屈折誤差を生じやすい場合があるため、そういうときはデータの読み方を少し変えるといった工夫をすることもあります。
眼球の形状から血圧まで、手術前検査の項目は多数
白内障手術を受けるために必要な手術前検査の項目を挙げてみましょう。
1 視力検査
視力低下は白内障の代表的な症状の一つです。裸眼視力と矯正視力(日常で使っている眼鏡やコンタクトレンズをつけたときの視力)の両方を測定します。
両方を測定することにより、患者さんがこれまでの生活でどんな見え方に慣れてきたか、例えば何が見えて、何が見えにくい生活を送ってきたかなどをおおまかに想像することができます。
2 屈折検査
近視や遠視、乱視などの屈折異常があるかどうか、あるならどの程度の強さかを知るために屈折度を調べます。これら視力検査と屈折検査の結果は、手術後にどの位置にピントが合うようにするのが良いかを決める一般的な指標となります。
なおピントが合う位置を決める際は、患者さんに「手術前と手術後では、裸眼で見えるものが違ってきますよ」と丁寧に説明します。
例えば、単焦点眼内レンズを選んだ近視の患者さんが「裸眼で遠くが見えるようになりたい」と希望した場合、もしかすると「近くは今までどおりよく見えて、そのうえ遠くも見えるようになる」と勘違いしているかもしれません。ですから、念のため「今まで裸眼で見えていた近くのものが、老眼鏡を使わないと見えにくくなってしまいますが、それでもよろしいですか?」と確認するようにしています。
3 眼圧検査
簡単にいうと、眼の硬さを測定する検査です。眼球は球形を維持するために、常に一定の内圧を保っていますが、その眼圧が正常な範囲内であるかを調べます。緑内障の方であれば、手術の影響で眼圧が下がることもあるので、手術前の点眼の本数を減らせる場合があります。