弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

年収900万円の妻「戸建てが欲しい」に同意したが…

【ケース2】

男性(夫)と女性(妻)は婚姻しました。夫は食品製造業の経営を行っていました。妻は外資系証券会社に勤務し、900万円の年収を得ていましたが、婚姻を機に退職しました。

 

婚姻した直後から、夫婦は戸建住宅を取得することを希望していました。最終的に夫の父Aの協力を得て、Aが所有している更地の上に夫婦の家を新築することとなりました。夫とAは、土地の使用貸借契約書に調印しました。その後、夫からAに、土地の固定資産税額相当の金銭を定期的に支払っていました。

 

建物の建築資金4000万円のうち、頭金の1000万円は夫の婚姻前の預貯金から支出し、残りの3000万円は住宅ローンによりまかないました。Aが所有する敷地と夫婦の建物に抵当権を設定しました。

 

結婚から約3年後、夫婦の仲が悪くなり、離婚する方向で協議が進みました。

 

建物は夫が取得する(夫の所有を維持する)ことについて、夫婦の意見は一致していました。しかし、財産分与における借地権の扱いに関して意見が対立しました。

 

純粋な建物の価値としては、住宅ローンの残額と同程度であり、実質的にはゼロと評価できる状態でした。敷地の更地としての評価額は1億2000万円でした。婚姻期間中に新たに形成した住宅以外の財産としては、夫名義の金融資産が3000万円相当ありました。

次ページ夫と妻の意見が対立。結局、離婚で支払った額は…?

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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