弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

「1300万円」もの大金を支払った背景には…

<合意成立のポイント>

 

1 事業の実態

プラスチック加工業は夫婦とAが実質的に行っていましたが、名義としてはAが用いられており、結果的にAの名義で利益が蓄積されたという状況でした。

 

2 事業用資産の扱い

そこで、A名義の事業用資産のうち一定の部分は夫婦共有財産として扱うことになりました。夫婦共有財産として扱う金額については、実質的な未払いを算出することにしました。

 

まず、賃金センサスや同業種の平均賃金を基にして、過去の夫婦の賃金として妥当な金額を算出しました。その妥当な賃金額から、実際に支給された金額を差し引いた残額を夫婦共有財産の金額としました。このように算出した夫婦共有財産の金額の2分の1を妻に分与することになったのです。

 

3 他の事情の影響

実際には、夫の不貞が疑われる状態だったので、慰謝料の趣旨や、また、養育費の前払いとして分与額を加算する方向の要素もあり、最終的な解決金額の合意に至りました。

次ページ年収900万円の妻「戸建てが欲しい」に同意したが…

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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