※本連載は、NPO法人長寿安心会・代表理事を務める住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

引きこもりのまま加齢し…「パラサイトキッズ」の悲劇

【事例】

冬の札幌市内のアパートで、80代の母と50代の娘が死亡していたのを、ガス検針員が発見しました。死因は「低栄養状態による低体温症」。母の年金のみで暮らし、娘は30代で就職したものの、ほどなく退職して引きこもり状態でした。知人が生活保護の申請をアドバイスしたものの、「他人に頼りたくない」と拒否。現金9万円が残されていましたが、冷蔵庫は「空」だったそうです。

 

高齢化した「80‒50」親子の背景や課題が浮き彫りになった事件ですが、このような悲劇は氷山の一角に過ぎないと報じられています。

 

仕事にも学校にも行かずに親に寄生するニートやパラサイトが話題になったのが十数年前ですが、そのまま年月が経過し、寄生する(パラサイト)子ども(キッズ)が50代になってしまいました。親も高齢となり、高齢者と引きこもり者の経済的貧困と生活上の困難とが複合した悲劇です。

 

子どもとのコミュニケーションがとれずに子どもが荒れてしまい、家庭内暴力から殺人事件にまで発展するという惨劇もありました。

 

引きこもる原因はさまざまですが、例えば、就職して対人関係に疲れたり過重労働からのストレスを原因にうつ病を発症したりといった不安障害に陥っているケース、精神疾患や精神障害が引き金になっているケースなど、精神面のケアが必要な場合がほとんどです。専門家の手が必要です。

「家族の中だけで解決」は不可能

「いい年した子どもが独立せず家の中にいることは、恥ずかしくて世間に知られたくない」との心理があることで、外部との接触を図らず孤立してしまうと、問題は表面化しませんが、行政や専門家の支援が届きません。ずるずると閉塞状態が続くのですが、いずれ、経済面・心身面・生活面での限界が訪れます。

 

引きこもりの状態は、長く続くと社会復帰がいっそうむずかしくなります。そもそも家庭内だけで解決することはまず不可能です。

 

信頼できる友人や周囲に相談できる人がいなければ行政の窓口を利用することもできます。国では引きこもりの対策支援を行っています。知らない人と新たな関係を作ることによって道が拓ける可能性があるかもしれません。その人らしい生き方を見つけましょう。

 

早期の対応が望ましいのですが、高齢になってにっちもさっちも行かなくなる前の時間との競争です。

 

生活が困窮している場合は、「生活保護」の申請ができるかどうかを市区町村の担当窓口、福祉事務所の生活保護担当などに相談しましょう。

 

 

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住田 裕子

弁護士(第一東京弁護士会)

NPO法人長寿安心会 代表理事

 

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シニア六法

シニア六法

住田 裕子(監修、著)

KADOKAWA

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