朝食が8時からが当たり前の理由
リアルに疑似体験─老人ホームの24時間
入居者や家族は、老人ホームの日常をぜひ理解してほしい。これから書くことが実態であり、これが真実です。ここでは、介護付き有料老人ホームの一日を、時間軸で説明していきたいと思います。提供されるサービスの手厚さと利用料金は、比例しています。料金によっては、ここで記載されていることをしてもらえないホーム、逆に、さらに手厚くしてもらえるホームがあるということに、留意してください。
朝食が8時から9時の理由
老人ホームでの朝食時間は、多くのホームで8時前後から9時前後までの1時間程度になります。ただし、地方のホームや一部の高級ホーム、サービス付き高齢者向け住宅のように外部事業者に食事を委託しているケースの中には、7時頃からスタートするところもありますが……。
多くのホームが、朝食時間をこの時間に設定している理由は、早番と言われる職員の出勤時間の早朝出勤限界時間を、午前7時に設定しているからに他なりません。職員の平均通勤時間を1時間と設定した場合、朝の7時であれば、ほとんどの職員が出勤することが可能になります。ホームの運営思想にもよりますが、多店舗展開をしている老人ホームの場合、職員には定期的なホーム間の人事異動があります。企業の場合、一定時間を通勤時間と定義していますので、中には始発電車で出勤しなければ、間に合わない職員も存在するのではないでしょうか。地方の老人ホームの場合は、職員は自家用車通勤になりますので、このあたりは柔軟な対応になっています。
いずれにしても、老人ホームの場合、24時間職員がシフトと呼ばれる勤務体制で勤務しているので、原則としてまんべんなく夜勤、早番、遅番、日勤などの勤務を、ローテーションに沿って担っています。したがって、原則、一部の勤務帯に手厚くすることはできません。24時間、365日の勤務体制を考えてシフトを考える必要があるのです。
食事は自分の居室ではなく、食堂(ダイニング)で、全員一緒に食べます。もちろん、体調不良時などは、居室で食事を摂れるような対策が講じられます。入居者や入居希望者に対する説明では、食事中の誤飲事故を防ぐために職員が見守り介護をする必要があるから、ということになっています。しかし、限られた職員数で全入居者の食事を事故なく対処するのには、大きな空間で、集団で、同じ時間に集中して食べる方法が一番効率よく仕事ができるのです。さらに、ホームによっては、食事に集中できないという理由で、食事中のテレビを禁止するなどのルールがあります。