リハビリは医療?それとも介護?
いったいどちらの考え方が介護的には正しいでしょうか? 医療的な考え方で言えば、当然前者の考え方が正しいに決まっています。医療は治す改善することが使命だからです。しかし「介護的には」ということになると、おそらく議論が分かれます。ここが介護の難解なところ。介護とはその人の生活を支えることなので、その人の人生を総合的に判断して決めなければならないという守備範囲が広い仕事だからです。専門性というよりも、かなり広い守備範囲の人生哲学のようなものなのです。
現在の医療介護業界では何となくではありますが、医療と介護の役割分担ができています。しかし、その役割分担について、医療介護の全体像を踏まえて論理的な説明ができる人は皆無です。単に医療は医療、介護は介護というだけの役割分担しかありません。
リハビリは医療?それとも介護?という話の中で多くの関係者は、医療保険が使える場合は医療、介護保険が使える場合は介護という区分けをしているだけなのです。中には、介護職員が行なうリハビリは生活リハビリという介護であると言う人もいます。しかし医療と介護を区別するためには、明確にそこに各々の役割分担がなければなりません。医療にしかできないことは医療に、介護にしかできないことは介護にということです。
しかし現在、その役割分担における概念は医療の側から侵食されてきています。そのうち、すべての介護の概念は医療の概念の中に置かれ、結果、医療が介護も担うことになると私は考えています。介護業界は先祖返り、昔のように医療がすべてを担うということになっていきます。
現在、多くのケースで介護保険制度に基づき実施しなければならないことには、目に見える形での証拠や資料が必要になっています。この観点から考えてみても、医療はスムーズにその証拠や記録を整備することができます。しかし介護は、そもそも情緒的で実体のないことが多いため、証拠や記録の整備には不慣れな業務です。この整備ができていないことが「ダメだ」と言われるのであれば、介護の医療化を進めていく以外に方法はないのではないでしょうか。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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