ベトナム不動産投資の現場には、いたるところに「カモ」を狙う輩が潜んでいます。少しでも不注意なところを見せると、すぐに付け込まれるため、気を抜くことは許されません。本記事では、実際にあったトラブル事例を取り上げ、問題の原因とその後の対応策を紹介します。現地で不動産ビジネスを展開する筆者が、ベトナム不動産市場の最新動向とともに、外国人権利物件を購入・売却する際の注意点等を解説します。
予約を解約したが、代理店が返金に応じない
【実例1】プロジェクト遅延のため購入予約を解約したが、返金がない
大手デベロッパーの物件を購入するため、発売前に販売代理店に購入予約金を支払ったが、プロジェクトの販売が遅れたため、合法的に予約解約を行った。しかしその後、予約金の返金がなく、再三にわたる催促にも返事がない。
その後の経過と対応
ベトナムでの物件販売形態は、開発社(デべロッパー)が直接販売するケースは少なく、販売代理店が委託販売を行うケースがほとんどです。気を付ないといけないのは、デベロッパーの予約開始が始まる前に販売会社が予約受付を行うケースです。予約金はデべロッパーに行かず、販売代理店が保有しています。通常、予約の解約時に契約上の問題がなければ、予約金の返金は販売代理店の義務になります。
この件について筆者が調べた範囲では、相談者が納めた予約金は販売代理店の事前予約であったため、デべロッパーの受付は行われておらず、販売代理店が預かっている中で流用しており、即座に返金できない状況でした。結論を申し上げると、筆者が約2年の歳月をかけ、相談者以外の解約者のお金も含めた合計800万円の、全額回収を行いました。
物件を購入する際には、デベロッパーの信用も大切ですが、販売代理店の見極めも非常に重要です。販売代理店になるためには厳しい審査があるとはいえ、中にはいい加減な会社も少なくないのです。その場合、デべロッパーに訴えたところで、販売代理店はデベロッパーとは別会社ですから、デベロッパーが責任を取ることはなく、知らん顔をされてしまいます。従って、直接販売代理店から回収するしかありません。
もしこのようなトラブルに巻き込まれた場合、ベトナム国外にいる日本人ではほぼ直接対応はできません。弁護士や代理人を使ったところで、時間や費用がかかるばかりで結局泣き寝入りすることがほとんどです。
事前に取れる予防策としては、トラブルに巻き込まれないよう、多少手間がかかったとしても、しっかりと代理店の調査と確認を行うことです。
①販売代理店としての長期の実績を確認
②取引者からの紹介の場合も、本当に信頼できるのか確認
③同業者からの評価を確認
こういった最低限の調査と確認が必要です。似たようなケースではありますが、中には販売代理店の代理店(2次代理店)であるにもかかわらず、デベロッパーからの直接代理店(1次代理店)を装い、販売予約金をくすねていた事例もありました。
★この件で問題を起こした人物は、会社のカンバンを変え、現在も大手の販売代理店を行っており、次の被害者が出ないか懸念しています。
VINA COMPASS Co., Ltd.
General Director
沖縄県宮古島生まれ。久留米工業大学を卒業後、トヨタグループ系列の株式会社アイチコーポレーション入社。特殊車両メーカーの営業部門で16年勤務。
2004年、商談で訪れたベトナムホーチミンに魅了され、独立起業、単身にて渡越。 2006年、取引先の製薬会社と合弁で排水処理会社を設立。
国営事業であるホーチミン市病院排水処理事業の入札業者として認証を受け、在籍中235ヶ所の病院排水処理を手掛ける。2012年、合弁会社の株を売却。新たに浄排水処理会社としてSHINY VIETNAM社、不動産・建築会社としてSHINY REAL社を設立。現地企業やベトナム政府事業の実績を活かし、越人コミュニティに入り、浄排水処理事業を手掛ける傍ら、日系大手への環境コンサル支援や、現地最大手の不動産デベロッパー、VINHOMESの日系唯一の販売代理店としてCentral Parkプロジェクトの販売を手掛けた。2018年、SHINY社、合弁解消後、新たに独資でVINA COMPASS社を設立。不動産販売仲介、賃貸仲介、管理運営、内装工事、進出支援コンサル業を手掛ける。特に進出時の事業許可、会社設立時のリスクヘッジ関連を得意としている。
VINA COMPASS社ウェブサイト:http://www.vinacompass.com/
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