抑制は奏功するも、観光業・不動産業への影響は必至
ベトナムでは政府の新型コロナ対策が功を奏し、7月25日までは感染者415人、死者ゼロ人が続いたほか、市中感染も99日間ゼロが続いていましたが、その後、416人目の感染者が中部ダナンの病院にて確認されました。
政府は市中への感染者拡大を視野に入れ、ダナン市及び感染の疑いがある周辺の省の社会的隔離を実施しました。第2波としての政府の対応は迅速でしたが、すでに市中には感染が広がっており、わずか1ヵ月強の8月31日時点で感染者数は625人増え、1040人となっています。また、死者は0人から33人となりました。感染者1040人のうち695人が回復済みであり、ここ数日は感染者0の日もあり、第2波を抑え込みつつある状況です(ベトナム保健所資料より)。
ベトナムでは、世界的に見ても第1波の感染をうまく抑制していました。油断したわけではないと思いますが、市民生活が通常に戻り、条件付きで海外からの渡航者も受入初めていた矢先の事態であり、今後はベトナム政府もより慎重に対応することが予想されます。外国からの入国が制限されれば、観光業含め不動産業もさらなる影響を受けるでしょう。
新築物件より、値ごろ感のある中古物件の取引が増加
コロナ禍における現在のベトナム、ホーチミンの不動産状況とこの状況下での不動産投資について、最新動向を見ていきましょう。
現在の不動産市場について、ベトナムのニュースサイト「Tuoi Tre Online」に掲載された情報によれば、ベトナム建設省発表のハノイ市とホーチミン市における2020年1-3月期の住宅市場レポートによると、新型コロナウイルスの影響により、取引件数は大幅に落ち込んだ一方、供給数の減少もあって販売価格は小幅に上昇。2大都市の住宅取引件数は前年末に比べハノイ市で62%、ホーチミン市は45%減少しました。
同じく、ベトナム建設省が全国の54の州と都市のデータを要約した2020年4~6月の不動産市場に関するレポートでは、新築住宅の供給減を背景に、新型コロナウイルス感染の影響が続くなかでも取引価格は下落せず、ほぼ横ばいとなっています。2020年6月末までの新規認可のプロジェクト数は325件(戸数:7万300軒)、建設中のプロジェクト数は1425件(戸数:24万6780軒)、そのうち完成したプロジェクト数は73件(戸数:8900軒)でした。
ハノイ市では16の不動産開発プロジェクトがあり、7408戸の住宅が販売され、今年の第1四半期との比較では21.3%減少しました。同様に、ホーチミン市では8のプロジェクトがあり、3950戸の住宅が販売されました。ホーチミン市は今年の第1四半期の数値データがまだ出ていないため、参考までに2019年の第1四半期と比較してみると、約40%の減少となっています。
これらの傾向から、コロナ前の2019年度の新規住宅供給数も、法律の厳粛化や土地の高騰の影響で前年より減少傾向にあったこと、新型コロナの影響を受けて、デベロッパー側も市場を見ながらの対応を行っていることが読み取れます。
実際の市場では、2020年4月21日に執筆した記事『新型コロナ抑制に先んじるベトナム政府…不動産業界への影響は』でも記述したとおり、外国人の入国制限が続いており、外国人向けの観光業や不動産業は大きなダメージを受けています。とくに7月25日からのコロナ第2波の影響は大きく、それまで落ち着いていた国内感染が再び広がったことで、今後さらに状況は悪化していくと予想されています。
第2波が始まった7月末からの1ヵ月で、賃貸価格もコロナ前から20%~30%程下落しています。販売価格に関しては建設省のレポートにもあったように、新規では供給数が少ないことからも販売価格の小幅な上昇がみられますが、実際の現場では、銀行の貸し渋り・貸し剥し等もあり、中古物件、権利販売(引渡前の物件)に関してはコロナ前より30%程下落している物件も多くあります。
新規物件よりも、値ごろ感のある中古や権利物件などの取引に自ずと流れる傾向となり、新規物件のなかには、売れ残りとして値引きを開始したものも出てきています。