このふたつのグラフから日本経済は製造業によって支えられていることがわかります。トヨタ自動車のように生産方式に磨きをかけた製造現場は世界超一流ですが、非製造業では日本は生産性が低く競争力に乏しいありふれた国といってもよいことがわかります。
テレビ番組などをはじめとする国内メディアは日本のものづくりを礼賛することが多く、確かに的を射たものも存在します。しかし、ものづくり以外では米国や欧州などから謙虚に学ばなければならないことはまだまだ多いようです。多くの中小企業は競争力を高め、改善の努力をすべきなのではないでしょうか。
「日本人は勤勉でよく働く」イメージは誤り!?
日本人は勤勉でよく働くというイメージがありますが、先のグラフでいえば製造業以外の分野では平均以下であることがよくわかります。全産業の労働生産性はOECD加盟国34カ国中、21番目と平均以下に位置しており、競争力に問題があるように感じます。私たちは無駄な時間を過ごしているのではないでしょうか。
いまだによく見かける光景は、なかなか帰宅しない上司の手前、部下が夜遅くまで残業をしていることです。当然、残業代が発生しているわけですから、生産性は低下します。海外の企業で働く私の友人は理由なしに夜遅くまで仕事はしません。
また業務プロセスの見直しを行うことで、無駄な作業を減らし、かつ意思決定もスムーズに進むよう働きかけているといいます。日本企業は昔から続く慣習や、先輩のやり方をそのまま受け入れてしまう面があり、変化を嫌う傾向があります。
リーマン・ショックで破綻したギリシャに対し、マスコミ報道などの影響から「働かない怠け者の国」とのイメージを持っている方もいるようですが、実は日本の労働生産性はギリシャとあまり変わらないのです。ギリシャ人と日本人の違いは何でしょうか。
ギリシャは国民の4分の1が公務員という国です。人生はエンジョイするためにあると考える方が多いと聞いています。一方、私たちは人生の大半を仕事に注いでいます。しかし、日本の労働生産性のほうがギリシャより低いということは、ギリシャ人のほうがひとり当たりの成果が多いということになります。
私たちはギリシャ人よりたくさん働いているにもかかわらず、成果が少ない。労働生産性は非常に重要な指標ですので、これは大きな問題です。労働生産性から見れば、日本人は成果に結びつかない時間を多く過ごしているということになります。つき合い残業、無駄な会議、社内調整業務、時代に合わない業務プロセス、IT化の遅れなど見直すべき点が多いのです。
※本記事は連載『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』を再構成したものです。
松久久也
株式会社プレジデントワン代表取締役
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