日本は超高齢社会を迎え、労働人口は目に見えて減少しており、年金財源の枯渇を防ぐべく、定年引き上げを実施する企業も増えています。そんな今だからこそ「貴重な人材をどのように扱うべきか」という課題を再考しなければ、企業は運営不能になってしまう可能性があります。本連載では、株式会社プレジデントワン代表取締役である松久久也氏の著書『確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、資産としての「人材」とどう向き合うべきか解説します。

優秀な人材でも、原石のままでは力を発揮できない

人が資産としての役割を果たすためには知識が不可欠だと言えます。では、必要な知識を得るためには何が必要でしょうか。

 

それは時間です。知識はかなりの時間をかけなければ得ることはできません。時間という客観的な尺度を用いなければ知識を得ることはできないのです。

 

企業内教育を積極的に行っていない企業では、社員が子供の頃に親から施された知識、学校教育で得られた知識を頼りに企業活動を行い利益が生み出されているのです。しかし、社会が成熟化、複雑化する今日、そうした過去の知識だけでは不十分です。企業が人を資産として育て上げる必要があります。いくら優秀な人材でも、原石のままでは力を発揮できないことを企業は知らなければなりません。

 

原石を磨き上げるためには時間を投入することが必要です。時間を活かすことができるか否かで人生が決まる。それほど時間は大切な資源です。時間の希少性に人生のどの時点で気づき、濃密に時間を使えるようになるかがその後の人生を決めていきます。

社員は、一人当たりどのくらいの価値を生み出すのか

人が資産となった場合、具体的にどのくらいの価値を生み出すのでしょうか。決算の際、損益計算書にはその年の売上総利益(粗利益)が記載されます。これを人数で割ればひとり当たりの稼いだ利益がわかります。企業はいったいこの人件費の何倍の利益を稼いでいるのでしょうか。

 

労使対立の賃金交渉の材料として労働分配率が使われてきました。労働分配率は、事業活動により生み出された付加価値に対して人件費が占める比率を指します。

 

人件費÷付加価値=労働分配率(%)、という計算式で割り出されます。業種や時代によって、その指標も大きく変化しますが、おおよそ50%が目安となります。

 

労働分配率が30%台であれば優良企業と呼ばれ、逆に50%を超えるといわゆる赤字とみなされてしまいます。ただし、労働分配率が低ければ優良であると決めつけることはできません。労働分配率が低い企業は妥当な賃金を支払っていない可能性があるからです。

 

労働分配率が50%前後になると赤字企業とみなされてしまうのは、おおまかに言いますと、人件費の2倍以上の付加価値を上げなければ企業運営は難しいということを意味します。社員ひとり当たりで考えますと、自分の給料の倍の額を稼ぎ出さなければ赤字に転落してしまいます。経営者は社員ひとり当たりがいくらの利益を上げるべきかをしっかり認識することが大切です。

 

社員がひとり当たりいくらの利益を上げるべきか、認識する必要がある(画像はイメージです/PIXTA)
社員がひとり当たりいくらの利益を上げるべきか、認識する必要がある(画像はイメージです/PIXTA)

 

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確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす

確実に利益を上げる会社は人を資産とみなす

松久 久也

幻冬舎メディアコンサルティング

人をコストとみるか。資産とみるか。その選択が、会社の明暗を分ける! 日本は超高齢社会を迎え、労働人口は目に見えて減少。年金財源の枯渇を防ぐべく、定年引き上げを実施する企業も増えている。今こそ「貴重な人材をどのよ…

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