どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

普段は音信普通、何かが起こると出現する家族

介護保険サービスには、+αを求めてはいけない

 

本来、介護保険サービスには、余計な付加価値を求めるべきではありません。なぜなら、どの事業者も要介護度に応じた同一報酬で仕事をしているからです。

 

一般的なサービス業の場合、付加価値を追求していく場合は、当然、見返りの報酬を高くするために行なうのが普通です。「当社は+αの付加価値を提供しているので、他社は100円でも当社は150円いただきますよ」。これが、サービス業の競争力ということになります。同じような考え方で、他社は100円だけれども、当社は企業努力で80円でやらせていただきます、ということもあるでしょう。

 

老人ホームに入居させたから「もう安心」という家族に限って……。(※写真はイメージです/PIXTA)
老人ホームに入居させたから「もう安心」という家族に限って……。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、今の介護保険サービスは、質が高いからといって、多くの報酬をもらえる制度にはなっていません。逆に、質が悪いからといって報酬が減らされはしません。一部、「加算報酬」という制度があり、資格者の配置があればプラス報酬とか、指定されたセクションとの連携を行ない、記録を作成すればプラス報酬とかなど、「加算報酬」が設けられていますが、いずれにしても、外形的なものばかりで本質的なものではありません。つまり、すばらしい介護をしている事業者に対し、加算報酬があるわけではないということです。さらに、素晴らしい介護とは一体何か、という定義もありません。

 

家族間で解決できないことは、老人ホームでも解決できない

 

老人ホームへの入居を考える多くの家族の中には、家族間の問題を老人ホーム側が解決してくれると過度の期待を持っている人がいます。しかし、これは勘違いです。老人ホームは万能ではありません。家族が抱えている問題の根本を、老人ホームという他人が解決してくれるわけがありません。

 

家族の中には、老人ホームに入居させたので、「もう安心。解放された。これ以上、何もやることがない」という考えの家族がいます。さらに、そのような家族に限って、入居者がホーム内で転倒し怪我でもしようものなら、損害賠償の要求をしてくるものです。普段は音信不通、しかし、何か起こると出現する家族。このような家族のことを私の友人である識者は、「カルフォルニアの親戚」と呼んでいます。血縁関係はあっても海の向こうに住んでいるため行き来がない、というわけです。

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誰も書かなかった老人ホーム

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小嶋 勝利

祥伝社新書

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老人ホーム リアルな暮らし

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