どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

家族が抱える悩みは老人ホームでも解決できない

多くの老人ホームでは、入居者はもとより家族に対するサポート業務をサービスの一つとしていますが、それはあくまでも、サポートです。サポートとは、どこまでいっても当事者になることはなく、当事者の立場に理解を示してくれる人、ということにすぎません。わかりやすく言えば、自分の代わりに死んでくれる人になりえない、ということです。

 

小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)

家族の抱えている悩みは、たとえ、老人ホームに入居したとしても根本的な部分は解決できません。その問題については、引き続き家族間で解決を図る努力を継続しなければならないということです。老人ホームに入居したから、後は老人ホームが何とかしてくれるだろう、ということはありえないのです。

 

物理的な避難場所として老人ホームを活用することはできますが、子供に代わって父親の気持ちに寄り添うことはできません(老人ホームのキャッチフレーズやお題目の中で、「寄り添う」をキーワードにしているホームは多々あります。この場合は、「寄り添う努力はしたいです」ということだと理解するべきです)。

 

あくまでも、第三者として寄り添うだけなので、できることには限りがあります。家族だけではできない課題、たとえば、全介助の母親をレストランや旅行に連れていくことは老人ホームで解決することはできますが、その旅行や食事を本当に楽しく有意義なものにするには、家族が同席しなければならないと思います。

 

要は、老人ホームには限界があり、その限界は家族にしか埋めることはできないということを理解してほしいのです。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

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