日本各所に点在する、高級住宅地。どのようにして高級住宅地となったのか、その資産価値はどれくらいなのか。富裕層が住む、知られざる高級住宅地のストーリーを紐解いていきます。今回ご紹介するのは、新宿区市谷砂土原町。

武家屋敷町の名残りを感じさせる、都心の高級住宅地

新宿というと、超高層ビルが建ち並ぶ西新宿、ギラギラとした歌舞伎町などのイメージが強いのではないでしょうか。そんな新宿にも、高級住宅地、と呼ばれる街があります。

 

それは市ヶ谷。ただし市ヶ谷にはオフィスビルが多く林立し、また都市型の大学キャンパスも多いことから、会社員や学生が闊歩する街、というイメージが多いのではないでしょうか。しかし、JR市ヶ谷駅を出て、外濠を渡ったら、市谷見附の交差点を右へ。しばらく外堀通りを直進し左折。牛込中央通りをのぼっていくと、高級そうな低層のマンションが点在するエリアに。さらに路地を入っていくと、豪邸が並ぶ一画にも出合います。

 

ちょうど防衛省の裏手にあたるエリアは、江戸時代、武家屋敷町が広がっていた地域。いまでも石造りの堀が残っていたりと、江戸時代の名残りを感じさせますが、明治以降、武家屋敷の跡地には、富裕層が邸宅を建てて暮らすようになります。実は市ヶ谷は、山の手の高級住宅地として発展してきた街なのです。

 

そのなかでも冒頭の「市谷砂土原町」は武家屋敷町の名残りを最も感じさせてくれる街のひとつです。そもそも徳川家康に鷹匠として仕えた本多佐渡守正信の別邸があり、「佐渡原」と呼ばれていたことに由来します。

 

この一帯は、用途地域でいうと第一種中高層住居専用地域。住居環境を保つことが目的なので、建物を建てる際にはいろいろな制限が設けられています。規模の大きな店舗は建てられませんし、戯施設、工場、危険物を取り扱う施設なども建設は禁止されています。建物の用途や建物自体に厳しい制限があるため、活気という部分は確かに感じることはありませんが、その分、都心であることを忘れるような落ち着きがあります。

 

容積率には制限はあるものの、高さには制限はありません。それでも多くのマンションは4〜5階建ての低層。道幅は決して広くはなく、路地に入ってしまえば、車1台通るのもやっとというくらい細い道も。しかし高い建物が少ないので、道の狭さは気になりません。また近隣に東京日仏学院、現アンスティチュ・フランセ東京などがあることから外国人が多く住み、インターナショナルな雰囲気も同居しています。

 

※画像はイメージです/PIXTA
※画像はイメージです/PIXTA
[図表1]市谷砂土原町周辺図

 

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